9 中野翠 毎日新聞出版
中野翠が「サンデー毎日」に連載しているコラム、2019年9月から2020年10月まで分をまとめた本。このシリーズは十数年、新しいものが出るたびに必ず読んでいる。
2020年はついこの間のことなのだが、コロナ以降、あまりにいろいろなことが起こって、そのわりに外に出ていくことがあまりに少なくて、なんだか記憶がぼうっとしてしまっている。そんな事もあったなあ、と遠い昔のように思ったり、つい昨日のことじゃないの、と思ったり。
その期間に安倍首相も辞任しているのだが、中野さんは「脇の甘いひと、人を見る目がない」と書いている。温度が低いなあ、とつい思ってしまう。私はもっと彼に関しては日々怒り続けていたので。中野さんは、ちょうどコロナが大騒ぎになった頃に左手首を骨折されて、入院、手術、その後も家で静養せねばならなかったので、あまりコロナの影響をまともに受けていらっしゃらないのかもしれない。
ただ、トランプ氏については、彼がパリ郊外にある米軍兵士の墓地を訪れることになっていた日の朝、嫌がって訪問中止を決めたエピソードは書かれていた。第一次世界大戦で戦士した海兵隊員の墓地を「大勢の負け犬共が埋まっている場所」といい、戦没者たちを「負け犬ども」とも呼んだという。実は、行き渋ったのは、雨でヘアスタイルが乱れるのを嫌ったからだ、とも書いてあった。
「もはや、次期大統領はトランプ氏以外だったら誰でもいい」とまで彼女は書いている。同感。それは、成就したのですよ、と当時の彼女に伝えてあげたくすらなった。