137 石井敏夫 随想舎
古い写真が好きだ。古い街並みや風物、人々の服装や持ち物から歴史を読み取るのが楽しい。知っている風景が時間をさかのぼっただけで知らない場所になっていく。古い日本の風景は、まるで外国のようにさえ見える。
石井敏夫さんは、お茶の水の中央大学に通いながら神保町の古本屋街で古い絵葉書や地図、新聞などを探して収集された方である。この本は、彼の故郷である栃木県の絵葉書の集大成である。絵葉書には発行年月日が記載されていないため、正確な発行年や時代がわからないのが難点だが、それでもざっくりと明治末期、大正年代、昭和初期と区分けがされている。町の歴史が見て取れるのはとても楽しい。
この本は昭和63年に発行された。それがもう、遠い昔のこととなってしまっている。今の街並みは、また全く違うものとなったのだろう。
