123 田辺聖子 角川文庫
小学校高学年の時に古典「落窪物語」の子供向け抄訳を読んだ。「日本版シンデレラ」だと聞いて興味を持ったからだ。面白かったかどうかはあんまり記憶がないのだが、ストーリーはわりに覚えていて、高校時代、古典の授業で役に立ったような、役に立たなかったような(笑)。
田辺聖子がどんな風にこの古典を現代語訳したのかが知りたくて読んだ。田辺さんは、主人公のおつきの阿漕という女性を中心に、優しい温かい物語に仕上げていた。小学生の私は、あんまりわかってなかったんだろうと思う。だって、夜、男性がしのんできて、一晩過ごすのが「結婚」てなに?と思ってたんだから。そこで何がどう行われたのか「初めてのことをあなたはいくつもおしえてくれました」なんて歌がどういう意味だったのか、おぼこい私はなーんにもわかっちゃいなかったのねー、と笑えた。
それにしても、おちくぼの君は、継母の言いなりだし、阿漕の言いなりだし、右近の少将の言いなり。勝手に偲んできた人をすぐにお慕い申し上げ、その後の展開は阿漕のおぜん立て通りで、その合間合間には継母の言うがままに縫物三昧。継母の所から抜け出しても、今度は右近の少将の思うがままに添って生きていくとしたら、それってハッピーエンドなんだろうか。得意な縫物も取り上げられて、何人もの女官に付き添われて、退屈しなかったんだろうか。きれいな人だったらしいけれど、もし、きれいじゃなかったらどんな人生だったんだろう。そんなに女性が美しいことって重大なことなんだろうか。なんて考えてたら、つまんなくなってしまった私。夫にも、偉い人にも、困った人にも堂々と立ち向かい、たくらみを企てる阿漕のほうがよっぽどかっこいいわ、と思った。
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