おにたろかっぱ

おにたろかっぱ

33 成井昭人 中央公論社

読売新聞夕刊連載小説。「本の雑誌」で激賞されていた。予約を入れたらすごい待ち順だったのに、夫が先に予約していたので思わぬ速さで入手、夫より先に読んじゃった(笑)。

三歳のタロは机の傷に見つけたオニとカッパが友達。ぬいぐるみのウシも上田ウシノスケくんという名で仲間である。一度はちょっと売れたことがあるミュージシャンの父ちゃんはタロと毎日遊んでくれる。二人は朝から散歩に行ったり、おいしいパン屋さんでお芋のパンを買ったり、漁師のじいちゃんにお茶をごちそうになったり。母ちゃんはお仕事で忙しい。

カンキョウのために海に石を沈めて水をきれいにするのがタロの仕事。父ちゃんは音楽を続けるかどうか悩んでいる。漁師のじいちゃんは漁師になれと勧めてくれる。気持ちを決めるために地方ツアーを組む父ちゃん。だが、出発の前日に母ちゃんが熱を出す。タロを連れてツアーに出る父ちゃん。上田ウシノスケもなぜかついてくる。

子どもの世界は毎日新しいことが起きる。いつだって驚いたり発見したり忙しい。そんな子どもと毎日を過ごすと、大人までも世界が違って見えてくる。大人だから、子どもの世話もしなくちゃなんないし、浮世の雑事も山ほどあって、時にイラついたり怒ったり困ったりするけれど、でも、子どもとの時間は本当に貴重な、大事な、宝物のようなひとときだ。

自分の子供たちが小さかった頃のことを思い出した。ありありと思い出した。毎日、清志郎を聞いて一緒に歌ったことも、セリフを暗記するほど「紅の豚」を見たことも、ズボンのポケットが砂だらけだったことも、手のひらいっぱいのダンゴムシをじゃらっと渡されたことも、みんなみんな輝く思い出だ。

なんでもない毎日なのに、楽しかったよね。すごかったよね。その時は必死だったけど、あんなにすごい時間ってもう二度とないかもしれない。そんな風に思い出した。思い出せる本であった。