かわいそうだね?

かわいそうだね?

76 綿矢りさ 文春文庫

旅先では、日ごろ読まないような本も読めてしまう。綿矢りさという作家は遠い遠い昔、まだ彼女が十代だったころの一作を読んだきり。でも、こんな機会に読んじゃおっかなー、と文庫本を購入。この本は表題作と「亜美ちゃんは美人」の二編が収録されている。2011年初出、大江健三郎賞受賞作。

表題作の主人公、樹理恵は、彼氏の家に元カノ、アキヨが居候するという事態に遭遇する。愛してるのは樹理恵だけだけど、元カノは就職に失敗して、行く当てもなく、仕事が決まるまで家においてあげるだけ。だって、かわいそうだから。と彼は言う。別れたけど七年も付き合ったからまるきり他人になるのは寂しいし身内みたいなものだから、と。おれがアキヨと一緒に住むことをどうしても嫌なら、別れるしかない。そう言われて受け入れる樹理恵。でも、どうにも耐えられなくて、彼氏の留守に家を急襲し、アキヨと話をしたりもする。そして最後にどうしたかというと‥‥。

彼氏は優しくて誠実な人のように見えて、実は無茶苦茶な理屈を振り回して、全然、樹理恵を大事にしていない。なのに、それに気づかない(ふりをする)樹理恵。嫌なら別れるという呪文にしてやられている。誰かをかわいそうだと認定することが正義の御旗になる。かわいそうって、何。読んでいるこちら側までイライラする。守ってあげる、大事にしてあげる、気遣ってあげる。そんなん、くそくらえだわ!

で、同時収録の「亜美ちゃんは美人」もなかなかくせ者の小説である。誰から見ても完ぺきな美しさを誇る亜美ちゃんと友達になった主人公、さかきちゃん。誰からも愛される友達と、いつもそのおまけにされる自分。その差にうんざりしていたはずのさかきちゃんだが、亜美ちゃんは意外な行動を展開する。

誰かと自分をひき比べて、どうして自分はこんななの、と思ったことがない人は少ないと思う。でも、その人はその人で、別の苦悩を持っていたりもするわけで。自分の幸せを比較で測ったって意味がない。なーんだ、そうなのか。と思わせてくれるカタルシス‥‥なのかなあ。でも、なんか釈然としない部分も残る。

どうにもモヤモヤする小説ではあった。