35 草笛光子 文芸春秋
副題は「90歳のお茶飲み話」である。筆者の草笛光子さんは1933年生まれの俳優。「真田丸」や「鎌倉殿の13人」のご出演を拝見していたが、実に存在感があった。最近では佐藤愛子さん原作の「九十歳。何がめでたい」という映画で主演なさっている。
草笛さんは、先々週に亡くなった母と同い年である。夜寝付けない、朝起きられないと書いてらっしゃるが、母も同じようなことを言っていた。この本をリクエストした時は、母も草笛さんみたいによくしゃべって、よく食べていたのになあ。読むときに亡くなっているとは夢にも思わなかった。
旅行家の兼高かおる氏が亡くなったのをきっかけに「週刊文春」で始まった連載をまとめたのが本書である。戦争中や戦後、若い頃の思い出話から、往年の俳優仲間とのエピソード、そして今の老いとの闘い。途中にはコロナ禍も登場している。
草笛さんはお化粧を施すのがお上手だそうだ。女優仲間には前からお願いされていて、お葬式の時には、早目に行ってお顔にきれいにお化粧をしてあげるのだそうだ。でも、自分の分は誰がしてくれるの?と書いている。もう駄目だ、と思ったら急いでお化粧してから死ななくちゃね、ですって。
題名は、マネージャーもしていた作者の母の言葉。何があろうと、嘘をついたり他人を押しのけたりするのはやめ、卑怯な仕打ちや理不尽な目に遭ってもそこに塗れることなく毅然としていましょう、ということである。そういえば、ドラマや映画に登場する草笛さんの姿はいつも背筋が伸びて毅然としていた。私もそうありたいと素直に思う。
パーソナルトレーナーについて定期的に運動もなさっているというし、どうかいつまでもお元気でいていただきたい。
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