123 又吉直樹 ヨシタケシンスケ ポプラ社
お笑い芸人で芥川賞作家の又吉直樹とヨシタケシンスケの共著。又吉は、まだ彼が全然名の知れない二十代の芸人だったころから劇場で見ている。幽霊のようにぼんやりと登場して、相方の綾部に陽気に馬鹿にされてうっすら笑っていたのを覚えている。まさか、彼がこんな展開を見せるとは思いもよらなかった。
さて、「その本は」というこの本は、本が大好きだけれどもう年を取って読めなくなった王様が、二人の男に世界中を回ってきて珍しい本について話を聞いてきてくれ、と頼んだ話である。一年後、旅から戻った二人が王様に何を話したか。それが「その本は」というこの本である。
又吉とヨシタケが交互に語る。どちらもそれぞれの持ち味があって、面白い。又吉は結構なストーリーテラーだし、ヨシタケは一つの場所でぐ~っと深く掘り下げるような感じ。どちらも笑えるし、うーんと唸ったり、ちょっと泣きたくなったりもする。うまいなあ。
なぜ本が好きなのか、何を本に求めているのか、本に何ができるのか。最終的にそんなことを考えるに至る本でもある。ヨシタケが、最後に「誰かへの思いを載せながら届かなかった本たち」の話をしている。本は、これからそれを読む人たちへの思いにあふれていて、特定の誰かに届かなくても、未来において、きっと誰かには届くメッセージだ。なんて可能性にあふれたすごい力があるんだろう、と思わずにはいられない。
だから私は本が好きだ。