つけびの村

つけびの村

2021年7月24日

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「つけびの村 噂が5人を殺したのか?」高橋ユキ 晶文社

思てたんとちゃう。と読み終えて思った。私が勝手に期待していたのと違う内容だっただけなのだが。以下、多少ネタバレする危険もなくはないので、これからこの本を読む人は、以下の文章は読まないほうがいいかも。

2013年の夏、たった12人しかいない山口県の限界集落で、一夜にして5人の村人が殺害された。犯人の家に貼られた川柳は“戦慄の犯行予告”として世間を騒がせた。その川柳とは「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」である。

犯人は、実は小さな限界集落の中で村八分にされていた、かつてそこには夜這いの習慣があり、その家の女性を強姦から守った兄弟がいたためにいじめにあい、孤立していた、あるいは、犯人の犬が殺されたり、農機具が燃やされたりという事件がそれ以前にあった、などなど様々な噂が飛び交っていた。それらが真実なのか、本当に彼は犯人なのか、なぜ、村人五人が殺されねばならなかったのか、を何度も現地に通って調べたのが作者である。

それが本当だったのか、一体真相はどこにあったのか、はとりあえず書かないが、とにかく、限界集落は恐ろしい、田舎って怖い、という気持ちだけが沸き起こってしまった。スマホの電波も届かない、ネットもない、病院も警察もなければ店もない、となると、人々の娯楽は単なるうわさ話だけになる。限界になるまでその地に残された人々が、みんな仲良くやっていければいいが、実際にはそうもいかない。利害関係はより鮮明に対立していくし、迷惑な人はさらに迷惑になっていく。おかしなことが当たり前になり、当たり前のことが批判の対象ともなる。

小さな場所に押し込められたような息詰まる感覚だけは伝わる。だけど、だから、どうして?がわからない。結局何なの?と思ってしまう。狭い場所で生きるのは怖い、広い場所に出たい、いろいろな人のいる場所にいたい。そんな気持ちだけが残る。

いやね。もう少ししたら、私達、どこに住むか決めなければならないのね。だからこそ、実感を伴って、小さな田舎の村に住むことが想像できてしまうのかもしれない。そんな時期に読む本じゃなかったかなあ・・・。

2020/2/3