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「なのはな」 萩尾望都 小学館
放射性物質を擬人化した作品や、福島に住む少女を主人公とした作品が五編、収められた作品集。2011年の八月にはすでに発表し始められていたというから驚く。萩尾望都は、すごい。
私たちは、制御することもできないものを手に入れてしまった。できもしないことを始めてしまった。そのことを、漫画という表現方法を使って、こんなふうに表しているのか。表現するって、そういうことか。
萩尾望都は、立ち向かったのだな、と思う。それがどんな意味を持つのか、どれだけ力になるかはわからないけれど、表現するものは、表現するべき時なのだ、と私も思う。どんなに小さく、力にならなくても、その時、感じ、考え、知ったことを、形に残さねばならない。そのことを、萩尾望都は、ものすごくよくわかっていた、と私は思う。
細部に至るまでの美しい漫画、完成された絵。その美しさと裏腹な、恐ろしい事実。萩尾望都に、私は打ちのめされた。
2012/4/28