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「のはなし」伊集院光 宝島社
「笑っていいとも」が終わった。
何を今更、な話で申し訳ない。「いいとも!」が終わって私の生活の何が変わったかというと、昼食のお供がなくなった、ということだ。
私は一人でモノを食べるのが好きではない。食べてて全然美味しくない。でも、ご飯は食べなきゃいけないわけで。
今までは、昼に「いいとも!」をつけて、ワイワイやってるのを眺めながら食べていた。別に熱心に見ていたわけじゃない。一人じゃない感じがありがたかっただけだ。ところが、これがなくなると、どうにも困ってしまったのだ。他の番組で試してみたが、今ひとつしっくりこない。
で、たどり着いたのが、伊集院光のラジオ番組だった。「伊集院光の深夜の馬鹿力」をネットで聞いてみたら、これが面白いのだ。一見毒舌風に聞こえるけれど、すごくまともなことを言っているし、どんなことも、笑いにくるんでみせる。自分を客観化し、物事を冷静に切り取り、そして、笑いに変える。自分の中にある闇もきっちり見据えている。高校時代、不登校になり、ゲームに溺れ、卒業式直前に退学したそうだが、そのころの自分への眼差しも、非常にいい。後悔や、親への申し訳無さもありながら、どうにもできなかった自分をうまく許し、昇華させてもいる。それがあったからこその今、という揺るがなさもちゃんと感じられる。
そういう彼の語りがエッセイとなるとこんなふうにまとまるんだ、と改めて感心する本がこれだ。「あ」から始まって、五十音順のタイトルで4ページ程度のエッセイが80篇ほど並んでいる。元落語家というだけあって、見事な話の進め方だ。こんな面白いエッセイがあったんだ、なんで今まで知らなかったんだろうと驚いた。
伊集院光。今、私の中ではブームである。
2014/5/13