8 阿川佐和子 中央公論社
どんな内容なのかも全然知らず、いったいなぜこれを借りてきたのかもわからず読んだ。というのも、図書館に予約を入れたのははるか前のことだったので、もうすっかり記憶にないからだ。阿川佐和子が小説を書いているのか、そういえば書いていたな・・程度。そういえば、「強父論」はなかなか良かった覚えがあるが。
読み始めたら、なんとあなた、これはタイムワープものだ、とすぐに判明する。えー、そうなの?大丈夫?とまずは思う。SFって色々設定が面倒だし、読者もうるさいし。と思ったら、例の阿川節(どんな節だ)でノンシャランと細かいことは気にせずに、物語はどんどん進む。科学的な説明なんて全部、すっとばすのよね。
主人公の高校生とそのおばあちゃまが東京タワーのエレベーターから降りたら昭和38年だった。うわー、どうしよう!けれど、割と困りもせず物語は進む。おばあちゃまにしてみれば、勝手知ったる昭和の町だしねえ。で、そこからどうやって戻れるのか、とか、過去を変えたらどうなるのか、とか定番のタイムワープ問題が出てくるのだが、どうってことないのよね。なんとかなっちゃう。そこがまた、良いっちゃ良い。それを許せないガチガチのSF ファンたちは腹を立てるだろうなあ、とは思うけれど、何せほら、阿川さんですから。(と言っちゃいけないのかなあ。そう思わせる何かがある阿川さんに、私はむしろ脱帽するのだけれどね。)
なんだかんだでいい物語だ。最後には温かい気持ちになるし、こわいことは何もない。結局、こういう安心なお話が私、好きなのだわ、と改めて思ったものでした。