ぼくのお父さん

ぼくのお父さん

2021年8月3日

62 矢部太郎 新潮社

書評をみると絶賛されているが、私は「大家さんと僕」のほうが好きだった。と思うのは、きっと私が「ぼく」のお母さん側に立つからなんだろう。

ぼくのお父さんは画家で絵本作家で、でもあんまり仕事をせず、家で僕と遊んでばかりいる。近所の子たちと全力で遊ぶし、みんなには羨ましがられるけれど、時々お母さんからは「仕事して」と言われている。編集者もたまに様子を見に来るけど、全然仕事は進んでいないし。

美味しい竹の子が煮えているのに、子供にお預けさせて、その絵を描くお父さん。次に同じことがあったら、もう、子供に食べさせちゃうお母さん。私はお母さんだなあ。お金がなければ、子供だって育てられないし。人は夢を食って生きていられるほど軽い存在ではない。でも、矢部太郎は、そう言えば、霞を食って生きてるみたいに軽い人だっけ。お父さんの子なんだろうね。

矢部君は、これからお笑いの仕事はどうするんだろう。なんて、勝手な心配をしてしまう私。