105 春風亭一之輔 朝日新聞出版
この方、お亡くなりになった円楽師匠の後継で「笑点」メンバーとなったそうです。知らなかった。笑点、ほとんど見ませんので。
これは、「週刊朝日」連載のエッセイを集めた本。2019年11月から2022年8月までの分なので、コロナが始まってから、いつ治まるんだよー的な気分の真っ最中までの連載。だからね、びっくりする。もうコロナ初期のころの空気を、忘れてるんだなー。人って、忘れる。そうじゃないと生きていけないからなんだろうけれど、あのころの不安感、閉塞感、客を呼べない、集められないエンタテインメントの追い詰められ方、世の中の混乱、などなど。ああそうだった、そうだった、と新鮮に思い出す、ということは忘れてたんだなー、と気が付くこの恐ろしさ。
こんな感じで、私たちは原発事故の恐ろしさも、津波の怖さも、みんな忘れてきたんだな。そして、古い原発だって稼働しちゃおうなんて信じられない法案が通っちゃったりするわけだ。と脱線する思考。いや、脱線じゃないかも。
エッセイは、軽妙で、読ませます。この人の落語もきっと楽しいだろうと思わせてくれる。(聞いたことがないんです、ごめんね。)でも、この連載、週刊朝日だったんだよね。終わってしまったってことか。週刊朝日、私もずっと読んでた。学生時代はその編集部の同室の片隅でアルバイトしていた。でも、終わっちゃったのね。週刊誌を終わらせるって。朝日新聞、追い詰められてるな。うちもやめちゃったしね。これからどうなるんだろう、まともに機能するメディアがどんどんなくなっていく現実。
なんて明後日の方向にどんどん思考は進んじゃうけどさ。この本は、電車のお供に最適。短くて楽しめるエッセイが山盛り。どこで読みやめて、どこでまた読み始めても、常に楽しめるから。旅のお供に、春風亭一之輔。とお勧めします。