まぐさ桶の犬

まぐさ桶の犬

54 若竹七海 文芸春秋

お久しぶりの羽村晶シリーズ。このシリーズが立派なのは、登場人物がちゃんとリアルタイムで歳を取って行くところ。若かった晶も、もう更年期の中年女だ。だのに探偵家業に精を出してひどい目にあっては体がボロボロになって行く。毎度のことではあるけど。今回は乗った車が崖から落ちかけて必死の脱出、車がずるずる落ちていくから結構怖い。高所恐怖症の私には厳しいものがある。よくぞ生きながらえているなあと思うほどの満身創痍は相変わらずである。そろそろ危険な仕事からは足を洗ったほうがいいのに。ま、本人もそうは思っているらしいんだが、例によって巻き込まれていくのがお約束。

妻以外の女に手を出したとか、息子の嫁に手を出したとか、男女絡みのいろんなごたごたが登場するけど、みんなよくそんな面倒なことするなあと思ってしまうのは私が歳を取ったからか(笑)。それを追う葉村晶には全くそんな色っぽい話はないのだが。物語のあちこちにミステリのうんちくがちりばめられ、最後には葉村晶の働くミステリ専門店店長によりミステリ本紹介のおまけもついている。ミステリのコアなファンはこんなサービスもたまらないのだろうが、私はあんまり…なにしろ人が死ぬ話は基本好きじゃないので。と言いながら、毎度読んでるんだから懲りないなあ。