20 小野寺史宜 祥伝社
以前「ひと」を読んだ。基本的に、同じ姿勢の小説である。東京の片隅で、学校や会社などどこにも所属せずに、一人で静かに自分らしく生きる場所ややり方を探す青年の話。誰かにどう評価されるか、ではなく、自分自身と向き合い、自分のやりたいことを考える。困っている人を助けたり、好きな人をまっすぐ好きになる。もはや、これはおとぎ話ではないかと思うくらい善良な話であるが、なぜか鼻につかないし、嘘くさくもない。すごいな、と素直に思う。
田舎のじいちゃんもかっこいい。尾瀬沼近くの片品村の話。尾瀬には前に行ったことがあって、あの静かな人の少ない穏やかな村の様子を知っていたので、余計に染みる話だった。人を守る人間になるって、なかなかできるもんじゃない。ただ、守られる方も、守られるだけじゃなくってさ。ちゃんと守りあえるようでいたいね。そこんとこ、よろしく、と最後にちょっと思ったおばちゃんであった。