みどりいせき

みどりいせき

94 大田ステファニー歓人 集英社

すばる文学賞、三島由紀夫賞受賞作。私はこの作者を全然知らなかったのだけど、ガザの子どもたちへの連帯を訴える受賞スピーチをネットで見て興味を持った。自分が受賞した喜びじゃなくて、今、ガザで何が起きているかを知ってほしいと語っていて、そこに惹かれて読んだ。

学校にだんだん行けなくなりそうな高校生が、小学校の時にバッテリーを組んでいた春という子と再会して怪しげな闇バイトに引き込まれていく話。途中からクスリが入って訳が分からなくなっていくのだけれど、全体としては、なんか青春、って感じもある。あるけど、正直、私にはよくわからない世界だった。

主人公の通う学校が都立高で、近所に小金井公園があったり、吉祥寺で取引したり、井の頭公園に行ったりして、ロケーションがよく知っている場所ばかりだ。あの高校の話か?とか、吉祥寺あのあたりか?とか妙にリアルに読んでしまった。

主人公の置かれている生活環境も、電気代を払わないで電気を止められたり、母親から十分に食事代を貰えていなかったりしてどうにも困窮している。授業も友達も、うまく関われない。そんな中で、仲間に出会う物語でもあるのだな、と思ったりもするのだが。

私も、この物語を語るよりは、今、ガザで何が起きているかをみんなに知ってほしいと思った。そういうことだ。