2 宮田珠己 大福書林
宮田珠己は新刊を出したら即買いの作家のひとりである。この本も出版されてすぐに購入した。図書館の本には期限があるが、購入本は永遠に手元におけるので、「これから読む本」コーナーに置きっぱなしで相当時間が経ってしまった。お正月で図書館本が尽きたので、ようやく読めたというわけ。
マルコ・ポーロの東方見聞録が出されたころ、実は旅になど出たこともないのに東方世界の旅行記をでっちあげたジョン・マンデヴィル。だが、それがイカモノであると世間にばれ、ペテン師扱いされてジョンは死んだ。ところが、この本を本物だと信じ込んだ教皇ウルバヌス六世は、ジョンの息子アーサーとその義弟エドガー、そして修道士のペトルスに、この本にあるプレスター・ジョンの王国を探してくるように命じる。そこから始まる不思議な旅の物語。
子供のころ、ガリバー旅行記を読んだときのわくわく感を思い出した。変な生物、不思議な民族、おかしな植物。文体はサッカレイの「バラとゆびわ」みたいな感じかな。知らない場所へ連れて行ってくれるような、そして、いつも少しユーモアが含まれているような。
物語も良いが、本の装丁や挿絵も素晴らしい。折り込みで絵巻が仕込まれていて、中世の地図のような、魔法の書のような作りである。そうか、宮田さんはこういうのが作りたかったのだな。この人は、世界をこんな風に見て旅をしていたのか。