イン・ザ・プール

イン・ザ・プール

131 奥田英朗 文芸春秋

この人、初めましてかと思ったら、14年前にこのシリーズ三作目の「町長選挙」を読んでいた。おデブの精神科医、伊良部一郎がどちらにも登場する。本作が第一作目だったようだ。第二作目の「空中ブランコ」で直木賞を受賞したそうだが、未読である。なぜ一作目のこれを読もうかと思ったかというと、第四作「コメンテーター」という新作が出た、と誰かが書いていたのを見かけたからだ。新作は図書館では手に入りにくい。精神科医が主人公だとあったので、あら珍しい、じゃあ最初のを読んでみようかと手を伸ばしたのだが、シリーズ作を前に読んでいたとは。老人力がさらに増したなあ。

この作品が最初に発表されたのは2000年のことである。確かに古い。ケータイ中毒の高校生がメールを打ちまくる話なんかが出てくる。ケータイにコードでストロボをつなげば写真だって撮れるなんて書いてある。注射を打ちながら太ももや胸元をチラ見せする看護婦も登場する。これだって今やハラスメントだ。時代は変わるなあ。

精神的に追い詰められている登場人物に対し、かなりおちゃらけた斜めからのアプローチでいつのまにか症状を和らげ、治していくのが精神科医、伊良部一郎である。どこも信用ならないし、何なら金持ちの甘やかされたお坊ちゃんでいけ好かないマザコン男なのだが、ある意味本質を見抜いている。不思議な魅力のあるキャラクター…なのかもしれないが、やっぱり時代的な古さは否めない。これを最新作ではどう処理していったのか、逆に気になってくると言えばそれはそうなんだが。

その前に、直木賞受賞作を読んだほうがいいかも。

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サワキ

読書と旅とお笑いが好き。読んだ本の感想や紹介を中心に、日々の出来事なども、時々書いていきます。

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