113 三浦しをん 双葉社
「ののはな通信」以来の三浦しをんである。
餅湯温泉に住む男子高校生が主人公。彼は、土産物屋を営むシングルの母と二人暮らしである。が、月に一週間だけは山に住む別の母のもとで過ごす。そっちの母のほうがお金持ちで、イケメンで料理のうまい若いツバメが一緒に住んでいたりする。そんな彼の青春の日々が描かれる・・・・のだが。
うーん、どうなの。「愛なき世界」みたいな迫力はどこへ行ったの。なんだかふわふわとしてリアリティに欠ける物語だ。大体、高校生にもなって母親が二人して、そのことに疑念を抱かない、問いたださない、反抗もしないってどうよ。ただただ優しくて勉強のできる優等生でいいの、本当に。
もちろん、なぞは解き明かされていくんだけどさ。母が二人いるという状況は、なんだか「そして、バトンは渡された」を思い出させるし、町内みんなが見方で守ってくれている環境は「プリンセス・トヨトミ」を思い出させるじゃないの。
悪い人は一人も出てこない。出るとしたら、間抜けな大人だけだ。まあ、そういうのも悪くはないが、なんだか気の抜けたコーラみたいな感じがする。少なくとも今までのきっぱりとした疾走感のある三浦しをんじゃない。
もっと彼女らしい物語が読みたい。