118 中島京子 講談社
中島京子祭りである。これは2022年刊だから割と最近。中島京子を味わうのに、短編だと物足りなくなってることに気が付く。もっとがっぷり読みたーい。そうは思うが、短編は短編で面白い。素っ頓狂な設定が好き。
結婚や終活、離婚、妊娠など人生の節目イベントがテーマの短編が六編。最初の「家猫」は息子を持つ母親と息子と離婚したかつての妻、そして今の同居(?)相手のそれぞれの本音が錯綜する。まるで芥川の「藪の中」みたい。でもリアルだよなー。姑が収入や学歴というスペックでしか人を判断しなかったり、男性は伴侶が何を考えているかちっともわかろうとしていなかったり、その妻はそれに惑わされつつも自分の気持ちに気づいて離婚してやっと清々したり、新しい同居人はそれらすべてを超越して自分のことしか考えてなかったり。これ、リアルな主婦の掲示板に溢れてそうな話。
私が気に入ったのは、群に戻り損ねて海を渡ることを諦めた白鳥が恋敵になる結婚生活の話。まさかこんな展開になるとは思わなかったが、なんかこういう決着もありかなーなんて思ってしまった(笑)。人は、様々な障害に出会って思うようには生きられないものだが、だとしてもその中で何とか自分の在り方を探して、落ち着きどころを見出すものだ。そうしたいきさつへの作者のまなざしはなかなか暖かい。それって人間への信頼ってものじゃないだろうか。だから、中島京子は良い。
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