キングダム71・72

キングダム71・72

84 原泰久 集英社

毎度書くことなのだが、「キングダム」は基本、大量に人を惨殺する話である。ミステリですら、できれば人が死なずに済んでほしいと願ってしまう気弱な私としては、非常に苦手なジャンルである。その一方で歴史は好き。そして、人類の歴史とは、畢竟、惨殺の連続なのである。おお、なんという矛盾。なので、これもまた、毎度のように書いているが、「キングダム」は、心を薄ーく保って、薄目で読む(笑)。人がぽんぽん、丸太のようにぶった切られても、心を動かさないようにして読む。めんどくさい私。

たぶん、旅の途上で読むことが多いのは、そのせいもあるのかもしれない。新しい出来事、結構なストレスを受け続けて摩耗した心が鈍感になったところで読むと、生きている人間のドラマだけが浮き上がって見える。それがありがたい。そういえば、70巻までを読んだのも、イタリアでのことであった。

ここ数巻は、主人公の信と、美人剣士の羌瘣の関係が気になっている。こんなふうにまともに向き合ってしまったら、これはもう死亡フラグも同然ではないかと心配でならない。これだけじゃんじゃん人を斬り殺す話を読みながら、たった二人の人間の運命を心配するのか…と我ながら呆れるが。

よくぞこんな大量の登場人物を抱えた、史実をもとにした漫画を描くエネルギーがあるなあ、と作者には毎度ながら感心する。常人にできることではないね。