ギアをあげて、風を鳴らして

ギアをあげて、風を鳴らして

78 平石なぎさ 集英社

小説すばる新人賞。小学校四年生の女の子二人の物語。

かといって、普通の小学四年生を想像したら、全然違う。一人は新興宗教の神様、というか、「降り子」と呼ばれる創父(教祖)の生まれ変わり、癒知で、もう一人は、転校ばかりしている不仲な夫婦の一人娘、クミ。癒知は人工的なものを一切排除した食物しか食べない。とても賢いのだが、学校では特別学級にいる。ひょんなことから友達になった二人。母親と一切触れあわない癒知、鬱っぽくて家で何もしないクミの母親。教義に縛られて自由のない癒知と、両親の不仲に苦しむクミ。ついに二人は大人たちの理不尽から脱出しようと行動する・・・・。

子どもって不自由だ。私の両親は敬虔なクリスチャンだったので、宗教に縛られる感覚が少しはわかる。なぜ?どうして?と疑問をぶつけても答えは返ってこない。ただ、疑問を持つことの罪を指摘されるばかりだ。両親の不仲がどんなに子どもの心を傷つけるかも知っている。子どもは、学校と家庭以外に世界がなくて、そのどちらにも居場所がないと、ほんとうに苦しいし、つらい。転校生だった私は、その感覚もよく知っている。

子どもたちは疾走する。ギアをあげて、風を鳴らして。行け、行け!と私は思う。子どもを縛る大人なんて蹴散らしてしまえ。人はもっと自由に生きていいものなのだから。

子ども時代の自分に読ませてあげたい、と思った。大人は、もっと子どもを、子どもの人格を尊重しなければいけない。私は、心からそう思う。