クイーンズ・ギャンビット

クイーンズ・ギャンビット

2024年8月10日

80 ウォルター・デヴィス 新潮社

しばらくぶりのブログ。7月25日から8月9日まで、旅に出ていた。行先は、モナコとフランス。同時期にどうやらフランスではオリンピックが開催されていた模様だが、ただの一度も見なかった。そもそも興味がないので。ただ、オリンピックのせいで飛行機が混んで、イギリスのヒースロー経由でしかチケットが取れなかった。しかも、出発の日にカムチャッカ半島では火山活動が活発化していたらしく、噴煙の影響を受けずに飛ぶために、飛行時間が3時間ほど伸び、結果、乗継便には間に合わなかった。ヒースローでの悲惨なトランジットについては、また改めて書くとして。

旅に文庫を持っていくなら、お勧めは以下の通り、と教えてくれた友だちの仰せに従って、ただし今回は電子本で持っていった。たとえ文庫であっても、本を10冊以上持ち歩くのは結構たいへんだと何回かの旅の苦労の果てにようやく悟ったのである。電子本は好きじゃないんだけどさー。というわけで、これは、おすすめされた中の一冊。教えてくれてありがとう。

ごく幼い頃に両親を失い、孤児院で育ったベスは、実はチェスの天才であった。チェスを教えてくれたのは、施設のしがない用務員。孤児が扱いやすいように安定剤を投与する様なとんでもない孤児院で、ベスはあらゆる障害にも負けず、めきめきとチェスの腕をあげる。後にウィートリー夫人という女性に引き取られた彼女は、養母の後ろ盾でチェスの大会に出場し、好成績をあげていく。だが、その背景には薬剤やアルコール依存もあった・・・。

ドラマである。と思ったら、本当にドラマ化されていたのね。チェスの天才の成長物語というだけでも十分面白いのに、そこに、孤児院やら、男性優位の社会やら、薬物依存やら、女性問題やら、様々な要素が絡んで、そりゃもう揺さぶられるったらない。しかも、私はこの物語を、バックギャモンの世界大会の会場で読んでたんだから、臨場感さえあるというものだ。バックギャモン界にも、まだギャモンを始めて3か月なのに世界を狙えると思い込んで乗り込んでいく日本人の若者とかも、いるんだしね。勝利への熱意と、強者へのリスペクトと、同じゲームを愛する者同士の愛憎は、似たようなものがある。

チェスを知らなくても十分楽しめる物語ではあるが、チェスを知っていたほうが、さらに楽しめるとは思う。私は若い頃にボビー・フィッシャーを2冊くらい読んだことがあるのでちょっとはわかったが、チェスにもっと詳しい夫は、きっとさらに面白かっただろう。

旅のお供としては、かなり良い本であった。

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サワキ

読書と旅とお笑いが好き。読んだ本の感想や紹介を中心に、日々の出来事なども、時々書いていきます。

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