116 長江優子 岩波書店
児童書の読書会をやっている友人が教えてくれた本。いいなあ、児童書の読書会。忌憚なく感想を言い合える読書会にあこがれる。つい熱くなってひとりで語って周囲を引かせてしまいそうな気もするし、このコロナ禍、新しい場所で読書会を探すのも困難で、じりじりしている私。この本は、夏休みの課題図書だったらしい。第68回産経児童出版文化賞を受賞。
中学受験のための塾で知り合った女の子二人。一人は裕福な家庭、理解のある両親がおり、一人は塾代が払えないけれど、将来、アメリカ大横領になるという壮大な夢のため、塾に直談判をしてテストで優秀な成績を取り、特待生として学んでいる。その二人が取り組む砂像作り。ライバルの男子と、黄金のシャベルをめぐって競い合う。黄金のシャベルは有名な砂像彫刻家から授けられたものであり、彼の審判のもとに、よりよい砂像作りを目指して、二人はサンドイッチクラブを立ち上げる。
高学年の課題図書なんだなあ。これを読んで小学生はどんな感想文を書くんだろう。作者の思いはわかるけれど、ちょっととっ散らかりすぎのような気もする。世界の問題、テロやミサイルや難民の話、中学受験に対する姿勢、子供同士の中にある、貧困化裕福化という格差の問題、そして友情。いろんなことがてんこ盛り過ぎて、言いたいことはわかるけれど、整理が付かない。読んだ子供は、いったいどこに焦点を置いて感想を書くのだろう、気になる、読みたい、と思う。
若いころだったら、こんな本は、主張ばっかり前に出すぎて読みにくくてダメ!!と切って捨てていたような気がするが。これを情熱をもって書いてしまう作者の気持ちも、なんだかわかるよなあ、と思うおばちゃんになった私ではある。ここから、何を得るのかな、子供たち。そればかり、考えてしまう。