93 田崎健太 講談社
周防郁雄(バーニングプロダクション)本間憲(レプロエンタテインメント)堀威夫(ホリプロ)田辺昭知(田辺エージェンシー)平哲夫(ライジングプロダクション)マキノ正幸(沖縄アクターズスクール)長門大幸(ビーイング)大崎洋(吉本興業)ら、日本の芸能界の首領(ドン)に取材、彼らの語ったことをまとめた本。「本の雑誌」ノンフィクション部門ベスト2に入っていたので読んでみた。
私が歌謡曲に夢中になっていたのは沢田研二、西城秀樹や郷ひろみのあたりから、せいぜい言って松田聖子や岩崎宏美あたりまでである。ナベプロや「スター誕生」の話題にはついていけるが、B’zやBOØWYがすでに怪しい(笑)。SPEEDや安室奈美恵は知ってるけど、そんなに夢中になったわけではない。お笑いはMー1グランプリ第一回大会から網羅するほど好きだったが、松本人志の問題以来、急速に熱が冷めている。その程度の知識でこの本を読んだら、その程度の理解しかできない本ではあった。
芸能の歴史は古くはヤクザの歴史と結びついている。戦後は進駐軍との関連性も強かったし、その後も、とにかく人材を手元で育てて、仕事を選び、守り、極力外に出さないというやり方が日本式で、育ててくれたプロダクションに背こうものなら、そりゃもう大変な目に遭った。が、近年はネットの発達とともに自己発信が可能となり、かつメディアも多岐を極めているので、もはやプロダクションの役割はかなり薄れてきている。そんな転換期に、過去の芸能界のあれこれを読むと、どうにも大変なことだったのだなあと改めて思う。
できるだけ作者自身が本人に会う、というのが基本の本作だが、取材、面会が叶わずに亡くなってしまった首領も多くいる。とりわけジャニー喜多川に会えなかったことは残念である。もし取材が叶ったら彼が一体何を話したか。たぶん本当のことは言わなかっただろう。この本に書かれている、彼ら首領のしゃべったことも、どこまでが本当でどこまでが作り話なのかはよくわからない。しゃべる人によって、同じ出来事が全く違って語られたりもするので。
裏話と言えばそれまでだが、首領という人たちは、皆、自分は大したことはしていない、ただ、良い作品が後世に残せれば、みたいなことを言う。それにしてはドロドロしたやり取りが多すぎる。人々に夢を与えるはずの芸能が、こんな風な裏方によって支えられてきたのか。もちろん、楽しませてくれたことはたくさんあるけれど、つぶされていった才能も多々ある、吸い上げられた金銭も多額である。
良い楽曲、良いドラマ、良い舞台、良い芸。私が欲しいのはそういうものなのだけれど、それらを売り出すための組織には恐ろしいものがいっぱい詰まっていた。だが、それも、これから変遷を遂げていく。個人が個人の芸をそのまんま提示できる時代になって、これからたくさんの才能は、どんな風に広がっていくのだろう。うまくいけばいいのだけれど。
年齢のせいか、それとも広がりすぎた情報量の多さのせいか、このところ音楽や芸能への興味がめっきり減った。読みたい本と、見たい映画があればもうこと足りた気がしてしまっている。ましてやこんな芸能界の裏話を読んだりすると。もう十分だぜ、と思ってしまう私である(笑)。
