ジュリアン・バトラーの真実の生涯

ジュリアン・バトラーの真実の生涯

85  川本直 河出書房新社

これも、友達が勧めてくれた本。何の先入観もなく読んだら、驚きの展開だった。どう驚いたかをここに書くとネタバレになるから困ったなあ。何しろ、私はアメリカ文学に詳しくないので、非常に感心しながら読んだ。トルーマン・カポーティの「冷血」は読んだし、ヘミングウェイは好きだから、そこらへんの人が登場した時はとても分かりやすかったのだけど、それ以外は知らん人が多いなあ、みたいな感じで読んだ。

ジュリアン・バトラーはクィア(性的マイノリティ)の有名作家で、彼の相方であるジョージ・ジョンが、彼の生涯を描き、それを翻訳すると同時に作者自身がこの本を書いた・・のであるが。ジュリアン、ジョージ、どちらの著作も非常に魅力的で、これはもう、すぐにでも図書館に検索を入れねば、と思いながら読み進めた私である。舞台はアメリカからヨーロッパに飛び、イタリアが多く舞台となっていた。そのため、まだイタリア旅行の記憶の生々しい私としては、おお、ヴァチカンの話だわ、とか、そうか、ウフィッツィ美術館は数日かけてみて回ったのね、とか、確かにフィレンツェのステーキはたまらん美味しさだわね、などなど臨場感もあって、まあ、楽しめたことといったら。アンディ・ウォーホルから、なんとイーディ・セジウィックまで現れて、あまりに有名人が登場し続けるので、「フォレストガンプ」を思い出した。そう、それ、結構いい線行ってたのよね(笑)。

素晴らしく緻密で、様々な要素が重層的に重なった、スキャンダラスでリアルな物語。なんかすごい、としか言いようがない。第73回読売文学賞受賞だそうだ。そうだよな、なんか賞取っておかないとおかしい、この作品は。でも、芥川賞ではないかも。

崇高な文学論から、下世話な下ネタじみた話まで、いろいろぶっこんであるけれど、全体としては非常に知的な水準が高い。私は、自分がいかに文学に疎いかに驚きあきれながら読んでしまった。それを何にどう役立てるかは自由なんだけど、とにかく教養って素敵。もっと教養深くなりたい、と欲張りな気持ちさえ芽生えてしまった。

これまた、世界中のギャモン好きが集結したバックギャモン世界大会の会場ロビーで夢中で読んでいたので、世界中の文学者が登場する物語に臨場感を貰えて、旅の途上で読むとさらにお得な本であった。教えてくれて、ありがとう!!

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サワキ

読書と旅とお笑いが好き。読んだ本の感想や紹介を中心に、日々の出来事なども、時々書いていきます。

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