スウェーディッシュ・ブーツ

スウェーディッシュ・ブーツ

127 ヘニング・マンケル

「イタリアン・シューズ」の続編。といっても、登場人物の設定などが微妙にぶれているので、これはこれで独立した作品として読んだほうがいいらしい。というけれど、やっぱり連続性を持って読むよね。そして、特にそれで違和感はない。

主人公のフレドリックはスウェーデンの孤島に相変わらず一人で住んでいる。娘のルイースはどこで何をしているかわからない。物語のしょっぱなに、フレドリックの家は火事になる。祖父の代から受け継いだ家は全焼する。しばらくはルイースの残したトレーラーハウスに住むしかない。すべてを失ったフレドリック。しかも、保険金目当ての放火じゃないかと警察に疑われる始末である。そんな中、突然ルイースからSOSの電話が入る。そして、彼女を助けにパリに飛ぶ。

相変わらずフレドリックは嫌な奴だ。話はいろんな方向に飛ぶし、思いがけない展開を見せる。だが、どんな場所へ向かっても、どんな状況に陥っても、フレドリックという人物像は一貫して揺るがない。過去の話、今感じていること、不安も怒りも喜びも希望も、すべてフレドリックそのものだ。一人の人間をここまで確固たるものとして描き出す筆力に脱帽する。

前作よりはミステリ要素が多い物語。ある種の予想が立ち、それが当たったりもするのだが、だとしてもミステリとしてすぐれて楽しめる。分厚い本であり、そしてあちこちに話は飛んでいくのだが、決して飽きることなく最後まで夢中で読める本である。これが作者の最期の本だということが信じられない。もったいない。

老年を迎えて人生に惑うフレドリックが、いやな奴だと思いつつも共感に代わって行ってしまうことに苦笑してしまった。本当におもしろい一冊であった。