137 益田ミリ 新潮社
手塚治虫文化賞受賞作。そうだったのか。
益田ミリはあんまり好きじゃなかった。なんか後ろ向きだよな、と思っていた。でも、最近、だんだん好きになってきていた。彼女が変わったのか、私が変わったのか。両方かもしれない。
この作品は、コロナ禍の三十代の女性の物語(漫画)である。漫画家を目指すナツコが、毎日の出来事をもとに漫画を描く。その繰り返しなのだが、最後に思わぬ展開があって驚かされる。
コロナ禍、いろいろなことが変化し、わからなくなり、あるいはむき出しになった。世界はそれまでと違ってしまったし、その中でさえ、戦争が始まったりもする。ナツコは、亡くなった母の納骨をし、一人になった父と暮らしている。まれにそこに東京に嫁いだ姉が来る。(コロナ禍なので移動もなかなか困難である。)ドーナツ屋でバイトをしながら、ナツコは漫画を描き続ける。生きるとは何か、人の一生とは何か。淡々とした日常の中で考えたことが素朴な漫画になって行く。
描くということ、表現するということの意味がそこには描かれる。好きだから。描きたいから。誰かに分かってほしいから。すべてを超えて、描くのがナツコである。
なんかしみじみしちゃった。こういうマンガにしみじみするのは年齢のせいなんだろうか。私も本を読む。読んでは感想をこうやって書き続ける。それは、好きだから。書きたいから。誰かに分かってほしいから。そして、それが私だから。そんなことを考えた。
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