「トルコのもう一つの顔」 小島剛一
これは、すごい本ですよ。驚いてしまった。
私の愛する辺境作家、高野秀行さんのお勧めにして、「旅行人」編集長、蔵前さんも、旅本ベスト5に入れてらしたそうです。
地味と言えば地味な本でしょう。
民族学、言語学のフィールドワークの本というくくりになるのか。
いや、しかし、すごいです。
どうすごいかは、とにかく読んで欲しい。
トルコには、実は人口の三割以上を占めるクルド人という人たちが存在しているのに、トルコ政府は、それをまったく認めていない。
少数民族の言語の存在も、一切、認めない。
そして、弾圧、差別の姿勢をゆるがせない。
恐ろしいことに、差別弾圧を恐れるあまりに、自分たちが何族で、何語をしゃべっているのかがだんだん分からなくなってしまった人たちや、隠れキリシタンのように隠れきってしまった人たちすら、存在する。
そういう人たちを、実際に現場に足を運んで、言語学的に調査研究していったのが、小島さんだ。
言語の天才じゃなかろうか、この人。
あらゆる言葉をその場で習い、分類し、覚えていく。
トルコ人よりも、詳しいのよ。
トルコの、「トルコ人」達の認識は、現実と乖離している。
そして、政府の役人すら、公式見解を信じきっている人、うすうす違うと知っていながら、それ以上確かめようとしない人、知っているけれど、知らない振りをする人、などに分かれている。
報告書や、公式な文書などの資料だけを信用して国を動かそうとしたってダメなのよね、と思う。
現場に足を運び、実地に調査研究しなければ、見えてこないことって、たくさんある。
事件は現場で起こってるのよね・・・・。
この本は、1990年の出版で、その後、どうしているんだろう、って思ったら、どうやら本を紹介した高野さんのブログにコメント付けてきたりしてるらしい。
トルコからは強制退去を二回食らっていて、当時はフランスの大学に所属してたけど、今はフリーランスだとかで、とにかく、フィールドワークが好きみたい。今も、どこかで調査してるんだろうなあ。
この本の続きも出したいけれど、日本に全然行く暇がないので、出版社と連絡も取れない、といっていたから、じゃあ、ボクが連絡をとってあげますよ、と高野さんが言ったらしい。
高野さんの尽力で、この続きが読めたら、どんなにうれしいか!
いや、こんなすごい本を、埋もれさせてはダメですよ、本当に。
2009/8/25