マッドジャーマンズ

マッドジャーマンズ

93 ビルギット・ヴァイエ 花伝社

この本も「モトムラタツヒコの読書の絵日記」で知った。

モザンビークから旧東ドイツにやってきた若者のその後を描いたコミック。知らないことだらけだった。そしてショックだった。

モザンビークから、国のエリートとして東ドイツに送り込まれてきた若者たち。だが、制服を貸与され、寮をあてがわれ、ドイツ人との交流も阻止され、語学学校を経て職場を割り当てられる。給料の六割は天引きで貯金に回され、門限を決められ、つきたい仕事にもつけない。そして、東ドイツが崩壊する。

ドイツでは人種差別にさらされ、同じモザンビーク人同士で恋をしても、妊娠すると強制帰国させられるか、中絶を強いられる。故郷は内戦でボロボロになり、家族の多くは死に、苦労して帰国しても天引きされたはずの貯金はどこかへ消えてしまっている。そんな中、帰国後静かに生活する者も、貯金を返せとずっとデモを続ける者もいれば、ドイツに残って大学に入り、医者となる者もいる。それぞれの姿が淡々と描かれる。

日本でも同じようなことが起きている。入管法が改正されようとしている。移民を強制的に帰国させる事が簡単にできるようになったら、移民を日本に都合がいいように使うだけ使って放り出せるようになるのだろう。入管で病気の移民を見殺しにした事件も起きている。同じ人間だというのに、なぜ、異国の人間をこんなに冷酷に扱えるのだろう。そして、どこの国でも似たようなことが起きているのかもしれない。

ドイツは、移民を親切に受け入れている国かと思っていた。けれど、どこの国でも人種差別はあるし、自国の利益を優先する。人はどこに生まれようと、同じ人間だというのに。

とりわけ女性移民の姿が印象に残る。女性はいつだって危険にさらされる。移民であるがために、どれだけひどい目に遭わされたか。弱い者を性的に虐待することに対して、私たちはもっと敏感でなければいけないし、不当な出来事には大きな声でNOを言わなければいけない。