長い長いモナコ一日目の巻
モナコ行きのバス。夫によると17年前は下道で海沿いを走り、景色がきれいだったそうだが、バスは高速をガンガン走る。それでもたまに海が垣間見えて美しい。
地中海だ。エズという山の上の砦の街も見える、というのだがよくわからない。一時間程度乗っただろうか、モナコのOffice du Tourisume(観光案内所)で下車。ちなみに、この場所は後日、別のトラブルの舞台となるのだが、それはのちほど。
今回は長い逗留なので、ホテルではなくアパートを借りてある。仲間たちの何人かも同じアパートを借りているらしい。グーグルマップを片手に夫が先導する。モナコは坂の街である。長崎みたいな地形。キャリーバッグをゴロゴロ転がしながら歩いていくが、おお、長い長い階段がそびえている。仕方ないので、えっちらおっちら担いで登る。疲れるー。(これは後に別の迂回路が発見された。)途中からは坂に屋外エスカレーターが設置してある。ありがたい。モナコは湿気が少なくてさわやかな気候だと聞いていたのに、暑いじゃないか。汗だくである。
アパートに到着。ドアを押して入り、指定されたポストボックスを開け、その中にある秘密の箱(?)の四桁のナンバーを回すと、鍵が出てくる。それをもって、さらにドアを開けて内部に入り、もう一つドアを開けるとそこが小さな小さなエレベーターの入り口。二階(表示はヨーロッパ式に1である)に上がり、右側のドアのカギ穴に鍵を入れ、ぐるっと回し、それを水平に戻すと、おお、ドアが開く・・・。007の導入みたいな展開だわ(笑)。アパートのオーナーは指示説明のすべてをメールとメッセージで送ってきて、一切、顔は見せたくないらしい。
アパートは広かった。ダブルベッドの寝室が二つにリビングとキッチン、それにトイレと洗面台とバスのある部屋。本来、四人は泊まれるらしい。キッチンには調理具、食器、基本的な調味料、食洗器などがあり、バスルームには洗濯機、掃除機、簡易物干し台までついている。
冷房完備だが、寝室のひとつだけは故障中で、その代わり扇風機が置いてある。これでホテル代より安いというのはありがたい。
ギャモン仲間の一人から、モナコ到着のラインが夫に入る。アパートは二階だというので、うちと同じだ、じゃあお隣かと思って様子を見に行ったけど、何の反応もない。どうしたことかとあれこれやり取りしているうちに、どうやら違う建物らしいことが判明。同じサイトで予約を入れたが、オーナーは近所にいくつもアパートを所有していて、振り分けて貸しているらしい。彼は我が家よりさらに坂の上にいるとわかる。
朝の出発が早かったので、この時点でまだお昼前。荷物を置いて、買い出しに行くことにする。近くにスーパーがいくつかあるというので大きめの「カルフール」を目指す。グーグルマップを参照するが、見つからない。ここだと思しき場所では工事が行われていて、もしかして、改修中?諦めきれずに、その一帯をぐるっと回って歩く。きゃあきゃあ笑い合っている女子高校生らしき三人組を発見したので、カルフールはどこかと尋ねるが、何言ってるかわからないという顔をされる。「スーパーマーケット?」とさらに聞くと「オオ!」とまっすぐ、指をさす。その先には屋内、影になったところにガラスの扉。近づいてみると、あらまあ、中はスーパーマーケットである。ありがとう!!「カルフール」では通じないのね、彼女たちによれば「カフー」であった。フランス語は難しい。
さて、そのカフーに入り、基本的な食材を買い集める。牛乳、パン、卵、レタス、トマト、ブロッコリー、チーズ、ハム、コーヒー豆、大瓶の水、昼食用にサンドイッチなどなど。帰宅し、サンドイッチで軽く昼食。
さっき連絡をくれたミズタニさんから連絡があったので、そちらのお部屋を覗きに行く。我が家から野外エスカレーターをさらに二本上がったところ。我が家と同じように、ドアの向こうの小さな小さなエレベーターで上がる。三ベッドルームにリビング、ダイニングキッチン。ここが、ミズタニさんのほかにあと三人が寝泊まりすることになる「サムハウス」である。残りの三人はさっきニースに到着して、こちらに向かっている。ここんちの洗濯機は我が家よりかっこいい。
場所がわかったので、とりあえず、退散、そのうちご飯でも一緒に食べましょう。部屋に戻り、我が家の各種家電をチェック。フランス語と英語の簡単な使い方説明書はあるが、洗濯機は見たことも無い形状だ。いったいどうやって使うのか。食洗器には使いかけの食器が入っていた。お掃除の人が見落としたのだろう。さすがに嫌なので、食洗器用洗剤らしきものを入れて、おそらくここを押せば洗うのだろうというスイッチを入れると、洗い始めたもよう。IHヒーターも使い方が分からず格闘していたが、ついにお湯を沸かすことに成功する。どうやらこちらの家電は日本製と違って、ちょっと触るくらいじゃ反応しない。ぐぐぐっと長押しして初めて「はっ!お仕事に呼ばれた?」と気づくタイプの様だ。
二つあるベッドルームは各自で一つずつ使うことにして、私は扇風機部屋を選ぶ。直接冷房がかかるより、間接的に冷たい空気が流れてくるほうがおそらく快適だと思われるからで、これは正解であった。ダブルサイズを広々と使って、非常に寝心地の良いベッドであった。窓からはお向かいの公園が見えて、子どもたちがのどかに遊んでいて、なかなか良い環境である。
さて、部屋と家電や備品をチェックし回って一休み。タオルがやたら大きいサイズしかない。しょうがないので洗面所に広げてかけて、二人で半分ずつ使うことにする。洗面所はボウルが二つあって便利なんだけど、鏡が背高一族用の位置に設置してあるので、顔の上半分しか映らない。背伸びしないと顔の下半分は見えない。
夕方になったので、野外エスカレーターを一本下に降りてレストランを物色していると、マルシェがある。
奥に小さいスーパーもあるのを発見、そこを見て回り、出てきたところのオープンカフェに、おお、サムハウスの一党が座っている!「ぼくたちビール頼んだんです」というので、そこに加わって、我々もビールを注文。新たに到着したタカハシさん、ウエノさん、Kさんにご挨拶。ミズタニさんは仕事をリタイアしてギャモン三昧の生活に入った、うちと同じような境遇の人。タカハシさんは40代の元食品会社の人で、サムハウスののシェフを担当する料理好き。ウエノさんは、なんとまだ大学院の修士の学生さんで、今回が初めての海外旅行なんだって!初海外がモナコって贅沢だわー。このタカハシさんとウエノさんの二人は、日本で行われた大会の「モナコチャレンジ」で優勝して参加費用をゲットしたラッキーメンバー。そして最後の一人、Kさんは、海外駐在員歴が長くて語学堪能な人。ツールドフランス好きの自転車乗りなんだって。
ビールを一杯飲んだところで、近くのインド料理屋に移動。カレーだのビリヤニだのタンドリーチキンだの各種たのんでシェアしながら食べる。大勢いると、いろんなものが頼めるからありがたい。イタリア旅行は二品頼んだだけでも料理が多すぎていつも苦労してたからなあ・・・。
夕食を終えて、では、明日、会場でね、と彼らと別れ、部屋に帰って今日はおしまい。長い長い一日であった。