モナコ・フランス旅行記6

モナコ・フランス旅行記6

2024年8月29日

エズに行きたしと思へどもエズはあまりにも遠しの巻

試合は勝ったり負けたり。ダブルスの一回戦は勝ったが、二回戦で敗退。私も1ポイントマッチに出てみたが、あっという間に負けてしまった。それでも夫はいくつか勝ち残った試合があって、今日も会場へ戦いに行く。私は疲れたので部屋に残る。

しばらく読書に励んでいたが、それだけではつまらないので、観光案内所に行く。エズという山の上の街が近くてとても美しいというので行き方を教えてもらうのだ。

観光案内所は、モナコについたとき、最初にバスを降りた場所。日本語は通じないけれど、へたくそな英語でもちゃんと聞いてくれる。エズに行きたいのだけど…というと、バスの時刻表をくれる。バスはここ、観光案内所の真ん前から出て、バス代はその場でキャッシュで払えばいいよ、だって。ああよかった。

観光案内所で聞いただけでなく、グーグルマップでもエズまでのいき方を調査する。直通バスのほか、いくつかバスを乗り継いでいく方法もあるし、電車でエズのふもとまで行って、50分くらい頑張って登る方法だってある。そんなのごめんだけどさ。

観光案内所の帰りにマルシェで買い物をする。牛乳が欲しいのだけど、冷蔵庫にあった牛乳らしきものに確信が持てず、店員に「これは牛乳ですか?」と尋ねてみる。「いいえ、これは牛乳ではありません。クリームです。」「クリームなんですか!では、牛乳はどこにありますか?」「牛乳は、ここにあります。」「小さいサイズのものはありますか?」「それは、これです。」・・・って、なんだか英語の初級教科書に載っているやり取りだわ、と笑えてくる。モナコの牛乳は常温保存が基本なので、冷蔵庫にはないことが分かった。

夫が戦いを終え、サムハウスに夕食のご招待を受ける。タカハシさんが作ってくれたポトフもラタトゥイユも、素晴らしくおいしい。マルシェで「pot-au-feu」と書いてある調味料をみつけてそれを使ったそうだ。パッケージを見せてもらって、後で私たちもそれを買った。ラタトゥイユも、ナスやトマトやズッキーニやベーコンなどを炒めてオーブンで焼いた本格的な味。メンバーに一人は料理上手が必要だよね、とサムハウスの皆さんもご満悦。タカハシさん、ほんとうにありがとう。

夫はお土産に大好きなパスティスという地酒を持参。元はアブサンと呼ばれるニガヨモギを使ったお酒だったのだが、中毒症状を起こす成分が含まれているというので一時製造中止になり、その代わりに作られたのがパスティス。アブサンなら夏目漱石に出てこなかったかな、とタカハシさんが調べて、ああ、太宰治だった、なんて話も出る。ヘミングウェイが好きだったというパスティスとシャンペンのカクテルは「午後の死」という名前。それに倣ってスパークリングワインも持っていってカクテルを作ったのだが、皆さんの反応はいまひとつ。思うに、ちょっと濃く作りすぎたんだろう。夫は好きだからいいけど、他の皆さんには強すぎたかも。

明日はエズに行く、といったらサムハウスの皆さんも一緒に行くという話になる。まだ試合の残っているKさんだけが、お酒も飲まずに準備に余念がなく、明日も試合だから、と言っていたけれど、夜、連絡があって、Kさんも同行するって。あーあ、負けちゃったのね、残念。エズは世界的な自転車レース、ツールドフランスの山岳コースの舞台なので、自転車乗りのKさんには聖地なのである。では、明朝、野外エスカレーターの前でね、と言ってその夜は終わった。

翌朝、エズ行き一行が集合。10時25分発のバスだが、早めに現地に行く。バス停がいくつかあるので間違わないように確認。観光案内所すぐ前に、エズ行き602番バスの時刻表が貼ってある停留所発見。そういえば、観光案内所の人も「そこから出るよ」と指さしていたのがここだ。

海外の公共交通機関は遅れるのが当たり前。さあ、これはどれくらい遅れるかな、なんて軽口をたたきながらみんなで待つ。定刻は過ぎたが、それはお約束だから気にしない。待つ。かなり待つ。でも、来ない。600番のバスは来るし、1番や2番のバスも来るのに、なぜか602番は来ない。「Hôpital」行のバスが何度も来るので、「もう、みんなで病院に行っちゃおうか」なんて言い合う。でも、来ない。グーグルマップを確認すると、おや?なぜか10時25分発は表示されず、次のバスに乗れと指示が出る。もう行っちゃった?でも、6人全員でここにいて、来るバス、来るバス、見てたのに。

不審に思って、英語が堪能なKさんが観光案内所に相談に行く。いや、ここに来るはずだよ、としか言われない。でも来ないんだよね。グーグルマップが現実を反映していないだけで、これから遅れてくるのかもしれない、なんて言い合ってさらに待つ。観光案内所にまた聞きに行くKさん。その間にバスが来ちゃうと困るので、伝令にたつタカハシさん。独自にネットでバスアプリを捜索するウエノくん。役にも立たないのに、案内所に様子を見に行く我々夫婦。なんて入り乱れている間に、ミズタニさんは仲間を見失い、もしかして、自分だけ遅れを取ったか?と不安になってそこらを探し回ったりして、みんなで右往左往。ようやく全員揃うが、バスは来ない。ウエノ君の捜索によると、ネット上では次のバスまで行っちゃったことになっている。

仕方ないので観光相談所でタクシーを手配してもらうことにする。が、観光案内所ではそういう業務はやってません、だって。代わりに教えられたタクシー会社に電話しても、誰も出ない。

この時点で、ミズタニさんは諦めてアパートに帰ることを決意。残りの5人は、案内所に教えられたタクシープールまで、炎天下、ぞろぞろ歩く。タクシーはいた。でも、運転手がいない。ランチに行っちゃってるのかも。すでに集合から2時間は経過している。で、結局、解散することになった。

その後、我々はマルシェでお惣菜を買ってアパートに帰り、遅いお昼ご飯を食べて休憩。

Kさん、タカハシさん、ウエノくんは帰り道に偶然、空車のタクシーに遭遇、そこからエズに無事到達したという。タカハシさんはエズから山道を麓まで徒歩で降りて、電車で帰宅。自転車乗りのKさんは、若いウエノさんを巻き添えにしてツールドフランスの山岳コース、エズ峠までさらに登って行き、なんと例の602番バスで帰ってきたという。

…ということは、602番バスは実在した?どこをどう走っていた?なぜ、我々は待っていたのに乗れなかったのか?謎は深まるばかり。その謎に、我々は翌日、挑戦したのであった。

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