モナコ・フランス旅行記7

モナコ・フランス旅行記7

2024年8月30日

602番バスの謎の巻

翌朝。身分違いのフェアモント様に宿泊替えする日である。今いるアパートは非常に居心地がよかったので、お名残惜しい。キッチンにはゴミ袋が完備されており、オーナーからゴミ捨て場に関するメールが来ていたので、まとめて捨ててきた。この部屋では長く過ごした。住んでる感があった。お世話になりました。

荷物をまとめて、朝のうちにフェアモントに移動。チェックインは午後3時からなので、荷物だけ預けて今日はエズに挑戦するつもり。別の日にエズに行ってきたTっちから夫が別のバス乗り場を教えてもらったので、そっちでチャレンジしようというのだ。

フェアモントにキャリーバッグを預ける。「まだお部屋には入れませんが」と言われたので「我々はこれからエズに観光に行くので大丈夫。」というと「それは良いですね。」とにっこりされる。

夫が聞いた新たなバス乗り場とは、観光案内所から少し行ったグランカジノのところ。と言っても、そのあたりにもバス停がいくつもあって、いったいどこから乗れるのか、夫婦で意見が分かれてしまう。近くの花屋さんに聞くと、「エズならそこのバス停よ」と言われるのだが、夫に言わせると、方向が逆なので違うと思う、という。グーグルマップの示すバス停は、また別の場所みたいだし。あっちもこっちも見張ってみるが、いつまでたっても、どこにも602番は来ない。こういう時は人に聞くのが一番だと思っている私は、止まっているバスの運転手に尋ねる。「エズ行きの602番なら、観光案内所の前から出るよ」と言われる。いや、昨日、そこで延々二時間待って乗れなかったんだよ、と言いたいのだけど、何しろ、停車している一瞬の間のやり取りなので事情を説明する語学力が足りない。そんなこんなであたふたしていたら、とあるバスが「じゃあ、これで途中まで行って乗り換えればエズには行ける、教えてあげるから」と言ってくれる。で、乗る。現金で支払って、チケットを貰う。ああ、よかった。

バスは先日バスを乗り間違えた海洋博物館方面に向かっていく。「エズに行きたいんだけど」という客がほかにも乗ってくる。我々同様「乗り換えの場所を教えてあげるから」と運転手が言っている。海洋博物館も超えてしばらく走ったあと「エズ行きはここで降りて少し前に行って左側のバス停から83番に乗りな」と、運転手からご指示が。さっきもらったチケットで次のバスも乗れるらしい。他にもエズに行きたい乗客が何人か降りて、皆でぞろぞろ別のGiantonという山のふもとのバス停まで歩く。

そこにある時刻表を見ると、十分ほど待てば83番バスが来るらしい。が、例によって、待っても来ない。発車時刻は既に過ぎてかなり経つ。グーグルマップで調べると、時刻表に載っていたバスは既に通り過ぎたことになっていて、次のバスは一時間以上先だと表示される。またかよ…と目の前が暗くなる。と、その時、来た、来ましたよ、83番バス。グーグルマップ、何を言ってるんだ。やれやれ。ほっとして乗り込み、着席。

バスは走り出す。次の停留所は、電車の駅前らしく、ものすごく大勢が乗ってくる。一人一人がチケットを買いながら乗ってくるので時間もかかるし、本当に乗り切れる?と思うほどの人数。ぎゅうぎゅう詰めだ。さっきのバス停で座れてよかった。

そこからは、日光のいろは坂みたいな坂を、バスはどんどん上っていく。海がきらきら光って見えて美しい。しばらく走って、おお、エズに到着!ついに来れたではないか。ああ、たいへんだった。バスを下りて、まず、帰りのバスをチェックする。バス停はひとつだけ。そこに確かに602番バスの表示もある。時間を調べて、それに乗って帰るぞ、それが本当に来るならば、と二人で誓う。

もうお昼を過ぎていた。とりあえずカフェでランチを取ってから歩き出す。エズは、山の上に、ムーア人からの攻撃を逃れるために作られた要塞のような村。道はくねくねと入り組んで迷路の様だ。観光名所なので人が多い。そして、暑い。



狭い坂道を延々と歩いて、上には熱帯植物園。遠く海を見下ろす絶景が楽しめる。そして、風が気持ちいい。ぐるぐる歩いて、植物園を後にする。降りていくと、有名な香水メーカー、フラゴナールの工場やお店がある。

お土産用に花やレモンの香りの石鹸をいくつか買う。買うついでに、冷房のきいた店内で身体を冷やす。すごい迫力でピンク色の花が咲いている木があった。

暑さに負けて、中国系のカフェでスイカジュースを飲む。前に台湾で飲んだスイカジュースが美味しかったからなのだが、なるほど、確かにスイカジュースは体を中から冷やしてくれることを実感。

さて、エズを堪能した我々は、602バスのくる時刻が近づいたのでバス停で待つ。モナコの別の場所に向かうバスが来たが、それはパス。私たちが乗りたいのは602番なのよ。本当に来るのかな。

と、じりじりしていたら、来た来た、602番。すごくすいているし、乗ったらあっけにとられるくらいあっというまに観光案内所についてしまった。グランカジノ前の停留所が本当にあるのかどうか、観光案内所で降りずに次まで乗って確かめてみよう、と夫と話していたら「ラスト」だって。ここが終点なのね。ということは、グラン・カジノのバス停も違ってたんだ。最初から、観光案内所の人が言っていたことが正しかったんだ。じゃあ、なんであの日、私たちは乗れなかったんだ?

正解は、バスの正面にあった。他のバスはすべてフロントガラス上の大きな表示板に「600」だの「CACINO1」だのとはっきり表示が出ている。ところが、この602番バスは、運転席のあたりにちっちゃく「602」の貼り紙がしてあるだけ。それも、なんだかよくわからない他の番号も下に並んでいたりする。そして、フロントガラス上の表示は「HS」だ。それがエズ行きだってわかるわけがない。つまり、我々一行6人は、全員、番号表示を見落としていたのだ!

何だ、そんなこと‥‥というなかれ。この分かりにくい表示のおかげで、私たちの貴重な時間は無駄にされた。まあ、大勢いると、誰かが見つけてくれるだろうという甘えもあったのかもしれんが。なんで気がつけなかったのだろう。愕然とする結末であった。

←モナコ・フランス旅行記6へ  モナコ・フランス旅行記8へ→