モナコ・フランス旅行記10

モナコ・フランス旅行記10

2024年9月2日

ヴァンスに行けたが自動販売機は手ごわいの巻

アンティーブ二日目は、ヴァンスを目指す。ヴァンスにはマチスが晩年手掛けたロザリオ礼拝堂があって、私はどうしてもここに行きたかった。17年前、夫が行って、とても良かったと言っていたし、写真でもテレビでも何度も見た。上野のマチス展で礼拝堂を再現しているのも見た。だからこそ、本物が見たかったのだ。

アンティーブからは、電車でカーニュ・シュル・メールまで行って、そこからバスで山を登っていく。なんとなくエズの悪夢が再来しそうな行程だが、がんばるぞ。若干緊張しながらまずはアンティーブ駅まで歩く。

駅で切符を買おうと思ったら、窓口が開いていない。自動販売機が二台、あるにはあるが、これが見たことも無い形状で、どこをどうやって押せばよいのか皆目見当もつかない。他の観光客らしき数名が同じように困惑して茫然としている。すると、そこにいた掃除夫の男性が機械を操作して切符を買ってあげている。彼の本来の仕事ではないはずであるが、これを逃したら我々も切符を買えない。後ろに並んで、我々も切符を買いたい、とお願いする。「ニースまでか?」と聞くので「カーニュ・シュル・メールだ」と言う。「往復か?」と問われて、ああ、後から考えるとここで往復を買うべきであった。だが、その後の流れがどうなるかわからないので片道で二人分、と頼むと、何やら不思議な操作をして切符を買ってくれた。ありがとう、本当にありがとう。かくて我々は切符を手に入れ、電車に乗り込んだ。

電車に乗り込んですぐ、私は腹痛を覚えた。お腹が差し込んで、痛む。トイレに行きたい。電車内にもトイレはあるらしいのだが、そして、それはここではないかというドアまであるのだが、開かない。目的駅までは数駅なので、何とか乗り切ろう。蹲って耐える。夫が心配してくれるが、どうにもできない。そして、目的駅に到着。トイレを探す。あった。ドアを開けて中に入ろうとすると「オッホン!」と咳払いが。鍵が壊れているらしく、先客が座ってらっしゃる模様。じりじりと待つと、男性が出てきた。急いで中に入り、鍵がないので夫にドア前に立ってもらう。何とか間に合った。やれやれ。こんなこと、めったにないのだが、よほど緊張したんだろうか、私。

ようやくお腹が落ち着いて、駅の外に出ると、そこにバスが止まっていて「Vence」と表示がある。「ヴァンスに行く?ロザリオ礼拝堂の方?」と聞くと、そうだというので乗り込む。すぐに発車。なんていいタイミングなの!30分ほどのどかな田舎道を登り、ヴァンスに到着。よかった。

ロザリオ礼拝堂は10時から。まだ少し早いので、街を歩く。旧市街には中世の面影が残っていて美しい。街歩きだけですごく楽しい。途中、教会にお邪魔して中で休ませてもらったりもする。

そうこうするうちに時間が来たのでロザリオ礼拝堂に向かおう。道々、前を歩いている家族連れから日本語が聞こえてくる。日本人に人気なのかしら。途中、自転車レースの選手らしき人達が通り過ぎる。山岳コースの練習だろう。さすがツールドフランスの国。

ロザリオ礼拝堂に到着。入場料を支払って中に入る。内部の写真撮影は禁止なので、記録が残せないのは残念。でも、何度も写真や映像で見た礼拝堂をこの目で見られる。

ステンドグラスが温かく美しい。壁の線描画も優しい雰囲気を醸し出している。もう絵筆を持つ力もなくなったマチスが、最後の力を振り絞って作った場所。この小さな町の人たちが、ほっとできるような、毎週ここに集って安心できるような礼拝堂だ。観光客も大勢来ているけれど、皆、静かに気持ちよさそうに鑑賞している。

庭も美しい。花も、山の景色もとてもいい。ここに来たかったんだよー、としみじみ思う。マチスは、「芸術は人に安らぎと幸せを与えるためにある」と言っていたという。それを体現したのがここだ。

いい気分で礼拝堂を後にする。夫は、17年前に立ち寄ったというカフェに行きたいそうだ。しばらく歩く。17年前に、そこで初めてパスティスを飲んだという話だったのだけど、メニューにパスティスはなかった。

お茶とコーヒーを飲んで、ひとやすみ。暑くて、日差しをよける席を選んだつもりが、だんだん太陽が移動して、日が当たるようになっちゃった。なので、退散。バス停に行ってカーニュ・シュル・メールに戻ろう。

バスでカーニュ・シュル・メールまで戻る。あとはアンティーブまで電車に乗ればいいだけ。だが、駅に行ってみると、切符売り場が閉まっている。例の不思議な自動販売機が外にあるのだけれど、その前では我々のような観光客が首をかしげながらそれと格闘している。しばらくして、彼らが諦めて行ってしまったので、我々も機械に近づき、あちこち触ってみる。が、何の反応もない。もしかして、故障?

グーグルマップで調べると、電車が来るまでに一時間は待つようだ。一方、この近くのバス停からは、アンティーブ行きがその一時間内に二本は走っているらしい。もし、バスが本当に来るならば、だが。とりあえずグーグルマップでバス停を調べると、駅から二分もかからないところにあるので、そこまで行ってみる。バス停には何人もが待っているので、一緒に待ってみる。

違う方向へ行くバスが何本か、来ては数人を乗せて出ていく。アンティーブ行きが来てもいい時刻だが、その影もない。本当に来るのか不安になって、横に立っている女性に、アンティーブ行きはここでいいのか尋ねると、そうだ、私もそれを待っている、だって。じゃあ、大丈夫かな。でも、来ない。若い女の子の二人組が来て、彼女たちもアンティーブに行きたいらしい。二本来るはずの次の一本の時刻になったが、まだバスは来ない。そうこうするうちに、電車が来る時刻が近づいてくる。ここはひとつ、駅に行ってみようか、と夫と話す。切符は、自動販売機のそばで見張っていて、誰かが買うのに成功したら、すかさずその人にお願いするのはどうだろう、と。

駅まで行くと、おお!切符売り場が開いていて、何人かが並んでいる。さっき閉まっていたのは、ランチ休憩か何かだったのだろうか。やれやれ、アンティーブまで無事に切符が買え、ホームに出て電車を待つ。待っていると、さっきまでバス停にいた女性も、あの若い女の子二人組もホームにいるではないか。みんな、バスを諦めたのね。バスの時刻表って、ほんと、あてにならない。そして、やっと電車が来て、無事アンティーブに戻れましたとさ。

明日はニース空港近くのホテルに宿替え予定。朝、電車で移動する予定なんだけど、また切符を買えなかったら大変。見ると、朝は空いていなかったアンティーブ駅の切符売り場が、今はあいている。じゃあ、今日の内に明日の切符を買っておけばいいのでは?と、窓口に並んでみる。駅スタッフらしき女性が、「チケット?」と聞いてきたので、そうだ、と言ったら、例の謎の自動販売機のところに連れていかれ、どこまで乗る予定かと聞いてくる。明日、空港近くのSaint-Augustinまで、二人分、という。彼女は、不思議な自販機の二重丸になったボタンの外側をくるくると回す。すると、機械が起動された!さらに外側の丸ボタンをくるくると回して何かを指定し、真ん中のボタンを押すと、決定が行われたらしい。くるくる回しと、真ん中ボタン押しを何度か繰り返していたら、なんと切符が買えたではないか。二重ボタンの外を回して、中を押す!そんな自動販売機、今まで見たことないから、わからない!!フランスの交通機関って、なんて手ごわいの・・・。

ちなみに、これは参考資料。フランス国鉄のサイトからの転載。確か左側のこんな感じの機械だったと思う。

その晩は、ホテルのフロントにお勧めのレストランを聞く。丁寧に地図に印をつけて説明してくれる。子どもたちが水遊びを楽しむ公園の近くのそのレストランは、雰囲気も良くて、もちろん料理もおいしくて、スタッフも親切だった。みなさん、ありがとう。

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