世界の児童文学をめぐる旅

世界の児童文学をめぐる旅

95 池田正孝 エクスナレッジ

「英米児童文学の舞台を訪ねて」の前編にあたるのがこの本。これは、続編よりも厚い。「ピーター・ラビットのおはなし」や「ツバメ号とアマゾン号」、「リンゴ畑のマーティン・ピピン」「クマのプーさん」「秘密の花園」「トムは真夜中の庭で」「ドリトル先生航海記」「グリーン・ノウの子どもたち」などなど、たくさんの作品の舞台を訪れた様子が載っている。

私たち夫婦も、結婚して間もない頃にイギリスの湖水地方「ピーター・ラビットのおはなし」や「ツバメ号とアマゾン号」の舞台を旅している。もうずいぶんと昔の話だが、美しい場所であった。ナショナルトラストのおかげで美しい自然がそのまま残され、物語の中に入っていくような思いだった。ただそれだけでも、とてもよい想い出なのだが、この本で作者はもう、それこそあちこちを訪ね歩いていて、なんて贅沢なの!なんて幸せなの!なんて楽しいの!と思う。この本を読むだけで、その喜びがじわじわ伝わってきて、とても楽しい。リンドグレーンの故郷を訪ねた話はとりわけ(私にとっては)素晴らしくて、レモネードの木や、まるでやかまし村のような家の写真にうっとりとしてしまった。

この人は、フィリパ・ピアスにも、ルーシー・M・ボストンにも直接会っている。間に合ったのね。うらやましい。

物語を先に読んでいると、それが映画化されたときなど、自分の持っているイメージと違う…とがっかりすることも多い。だが、この本で物語の舞台の写真を見てもがっかりすることはない。なぜだろう。それだけ物語がしっかりと大地に根差して描かれたものだからなのだろうか。

旅したい場所は多い。人生は短い。ああ、頑張って健康でいなくっちゃ。まだまだあちこち歩かなくちゃ。と、改めて思うのであった。