地球三周の自転車旅
74 石田ゆうすけ 新潮社
旅好きである。知らない場所で知らない人と出会い、知らないものを食べるのが好きだ。場所も、人も、とてもいいけれど、食もとても大切だ。私の旅の思い出はたいてい食べ物とセットになっている。バルセロナで指でつまんで食べたハモン・セラーノ。露店のように席を並べた台湾の店先で食べた鴨肉丼。デンマークの黒くてかたい、味の深いパン。旅は新しい味を教えてくれるし、くっきりとその場所、その土地を心と体に刻んでくれる。
この本の作者は自転車乗りである。「地図を破って行ってやれ!」という国内旅行の本を読んだことがある。でも、もともとはは自転車で世界一周…どころか三周した人なのである。30代まで会社勤めして必死にお金をためて、世界を自転車で回る旅に出た。それまでは節約のために豆腐や卵から栄養を取っていたのに、最初に入った国、アメリカでは牛肉が100g60円でびっくりして、それから牛肉ばっかり食べていたという。
まずは水の話。日本は本当に水が豊かな国だ。それからお米。意外に世界中でお米は食べられる。でも日本ほどお米を炊くのが上手な国はないのかも。そして、パン。フランス領だった国のパンはおいしいというのは本当みたいだけど、世界一美味しかったのはモロッコの焼き立てバゲットだって。麺は世界中にあるけれど、アルデンテが貴ばれるのはイタリアと日本だけかも。うどんやそばには意外な場所でも出会う。野菜はやっぱりパクチー。最初は臭い臭いと思っていたのに、慣れるとこれがうまい。アフリカのオクラはすばらしい。それから、魚。日本みたいに魚を豊富に食べる国は少ない。だよね。大陸の奥地だと川魚しかないし。でも、肉は牛、ヒツジ、ヤギ、どれもおいしい。イスラム圏では豚は食べないけれど。そしてフルーツ。追熟ができないフルーツは、現地でしか完熟が食べられない。あとは、ブータンのマツタケの話や、キューバの子豚の丸焼き、ミャンマーのモヒンガー、スリランカの絶頂カレーなどなど。
読んでいたら、ああ、旅に出たくなった。世界中のまだ知らない美味しい料理たち、待ってろよ、と言いたい(笑)。でも、年齢を考えるともうあまり時間が残されてないからなあ、急がなければ。
ちなみにこの作者の石田さん、まだ若いのだろうなあと思っていたのだが、確かめたら私とそんなに大幅に離れた年齢でもなかった。しかも、お子さんが生まれたというし、これから旅が大変だあ。お互い頑張りましょうねえ。