16 杉浦さやか 祥伝社
緊急事態宣言がまた発令されるらしい。4月から夫は引退生活に入り、毎日が日曜日!!本来なら、夫婦二人で世界中を旅して回るはずだった。オリンピックなんて見たくないから、その期間は海外に逃亡しようと決めていた。ああ、だのに・・・。(この状況でオリンピックだけはやるなんて言ったらどうかしてる。そんな馬鹿げた国になっちゃったのか、この国は、と心から思う。)
というわけで、今はひたすら旅の本を読むしかないのである。だから、この本。
旅のお楽しみの大きな要素は食である。食べたことのないものを、恐る恐る食べるドキドキ。食べたかったものをついに食べるワクワク。初めて出会う味覚に目が見開かれるゾワゾワ。この本は、24カ国の食について、イラストともに語っている。最初に登場したエールフランスの機内食の話に、すでにすっかり取り込まれてしまった。私も初海外はエールフランスだったから。
昔のエールフランスの機内食は、それはそれは美味しかった。食に誇りのある国だからか。エコノミーでも、ものすごくしっかりした食事が出て、食後には籠盛りのチーズを好きなだけ取っても良くて、ワインだって良質のものを瓶でドン、と渡してくれた。
それから、イギリスのごはんの話。フィッシュアンドチップスは油っこっくて、でも、酢をいっぱいかけると食べられなくもなくて。パブでぬるいビールをすすりながら食べたっけ。ヘルシンキのかもめ食堂は私も行ったけれど、経営者が変わっていた。ベトナムごはんは美味しい。フランスパンにレバーペーストやパクチーを挟んだバインミーが素晴らしい。バリも、ナシゴレンを始めとして、何もかも美味しい。香港は、それよりももっと美味しい。漢字のメニューを探り探りで、きっとこんな料理だろう、と思ってチャレンジすると予想とぜんぜん違うものがでてきて笑った。エストニアでは、ブッフェで、いったい何の料理かわからないままにお皿に取って、食べていても何なのか全然わからなくて、食べ終えても一体私の食べたのは何だったのだろうと不明だったっけ。肉だったのか、魚だったのか、それとも芋・・・?
ああ、食の思い出から旅の光景が次々に蘇る。世界を食べたい。あちこちで、訳のわからんものが食べたい。チャレンジしたい。美味しいものに出会いたい。
旅に出られる日がいつかまた戻ってくるなんて、なんだか信じられなような気がする。そんな今日このごろ。