17 関川夏生 岩波書店
1990~94年が面白かったので、さっそく続編を読む。年代的に同じ時代を生きた人が死んでいくので臨場感が増すというか、現実に亡くなったときの風景が浮かび上がってくる。
勝新太郎があの世で恥をかかないように、中村珠緒は棺桶に500万円を入れて煙にしたんだって。ああ、私にはできないわ。伊丹十三が亡くなったことも書いてある。あれは衝撃だった。彼の映画はだんだん人々に飽きられていたが、実は彼自身が一番自分に飽きていたのかもしれない。そういえば、石原慎太郎も退屈が一番嫌いだったとどこかで読んだ。退屈が嫌い、って。たとえば子どもを育てることって、長い長い退屈との闘いの日々だったりするんだよな、と唐突に思う。退屈くらいで死ぬなよ、と腹が立ってくる。まあ、それが死因かどうかは誰もわからないんだけどさ。
萬屋錦之介と勝新太郎は同時期にがんセンターで入院中で顔を合わせたけれど、どちらも声を発せなかった、という記述が生々しい。声も出せない病状で、二人の目が合う瞬間。映画みたいだ。
人は死ぬ。どんなにかっこよかった人も、どんなに栄誉を受けた人も、どんなにつらい人生だった人も。それを、改めて思うね。人って、平等だ、とつくづく思う。偉いとか卑しいとか、良いとか悪いとかじゃなくて。どんな人も等しく生きているんだ、と、これを読んで思う。