佐々井秀嶺、インドに笑う

佐々井秀嶺、インドに笑う

125 白石あづさ 文芸春秋

「逃げ続けたら世界一周していました」が面白かったので夫が借りてきた本。「荒唐無稽だ…」と言っているので続けて読んでみた。確かに荒唐無稽というか、波乱万丈というか、とんでもない人生の坊さんの話であった。

国民の大多数がヒンドゥー教徒であるインドで、カーストにさえ入れてもらえない不可触民を中心に、差別のない仏教徒に改宗する人々がいる。半世紀前までは数十万人しかいなかった仏教徒を一億五千万人にまでおしあげたのが、インド仏教最高指導者の佐々井秀嶺氏である。

白石あずさはライターとして日本で彼に会ったが、あまりに規格外の彼の人生と、柔和な顔で上機嫌に笑う彼に惹きつけられた。若いころに旅したインドにまた行ってみたくなって、佐々井氏の住むナグプールを訪れ、インド仏教最大の祭典「大改宗式」に参列した。帰国後、彼についていくつか記事を書いたところ、それが反響を呼び、佐々井氏も自身の人生について本を書いてほしいと願っていると聞いて、2018年、再度ナグプールへ行き、彼と行動を共にしながら取材を行った。その結果がこの本である。

学校も仕事も続かない、女に入れあげる、自殺未遂を繰り返し、仏僧になると言って修行を始めてもモノにならずに海外に逃亡する。そんな無茶苦茶な人生だった佐々井氏が、どうしたわけかタイを経てインドに流れ着き、龍樹と呼ばれる大乗仏教の高祖のお告げを受けてナグプールへ向かう。そこで布教を続け、不可触民たちの信仰を集めていくことになる。遺跡を発掘したり、政治的に行動したりするうちに、いつしか大高僧となり、インド国籍まで手に入れることとなった。

その辺の経過はそれこそこの本をお読みいただきたいのだが、スケールの大きい、それほんとなのかい?と尋ねたくなるようなものすごい人生を送ってきた方である。ご高齢だがご存命で、テレビや映画の題材になったこともあり、彼を訪ねていく日本の若い人などもいるようだ。いろんな人がいるもんだなあとつくづく思う。人の一生って、本当に様々だ。