僕には鳥の言葉がわかる

僕には鳥の言葉がわかる

73 鈴木俊貴 小学館

「動物たちは何をしゃべっているのか?」で山極寿一氏と対談していた鈴木俊貴の本。彼は若き鳥類学者で、鳥にも言葉や文法があることを発見、今、世界でも注目を集めている。私はこの人の話をラジオで聞いてあまりの面白さに大興奮したのを覚えている。

餌を見つけたときにコガラは「ディーディー」と鳴き、シジュウカラは「ヂヂヂヂ」と鳴く。その声が森に響くと他の鳥たちが次々と集まってくる。ヤマガラは「二ー二ー」と鳴き、群をえさ場に導く。それだけではない。シジュウカラは「ピーツピ、ピーツピ、ピーツピ・ヂヂヂヂ」と鳴く。「ピーツピ」は仲間に注意を促す声。いわば「警戒しろ」である。一方、「ヂヂヂヂ」は「集まれ」だ。ということは「ピーツピ・ヂヂヂヂ」は「警戒して・集まれ」という二語文である。

これらの鳥の言葉をたくさんの観察、録音、分析を経て明らかにしたのが作者、鈴木俊貴氏である。鳥は言葉をもっている。しかも、種を超えて、言葉を理解しあっている。シジュウカラの言葉に反応するのはシジュウカラだけではないのだ。

子どものころ本を読んだ人たちは絶対思い出すと思う。ドリトル先生は、アルファベットすら書けないけれど博学の学者であるクモサル島に住むロング・アローを心から尊敬していて、彼を探しに行った。そしてドリトル先生とロング・アローは人間の言葉を超え、鳥のワシ語で会話し、理解しあったのだ。鈴木俊貴氏は、もはや現代のドリトル先生ではないか…。

鳥が好きで、鳥をじっと観察しているうちに気が付いたり疑問に思ったことを長い時間をかけ、工夫を凝らし、考え、分析し、ついに新たなる発見をし、それを検証する。同じようなことに興味を持つ世界中の人がそれに興味をもち、熱心に話を聞き、楽しみ、すごいと喜んでくれる。その研究が自然を、世界を、地球を理解することを深め、ひろめていく。学問とは、研究とはなんと豊かで楽しいものなのだろう。その喜びをストレートに教えてくれるのがこの本だ。

そういえば、子どもたちが小さいころ、何度も「なんで勉強しなくちゃいけないの?」という質問を投げかけてきた。そのたびに、考えることは楽しい、知ることは世界を広げる、そして学びは人生を豊かにする、ということを一生懸命、私なりに伝えてきたと思う。でも、そんなことしなくても、この本一冊読めば、学ぶって楽しい、知るって面白い、勉強は人生を豊かにする、と子どもたちは自分で気が付けるんじゃないか。そんな気がする。

本当に良い本であった。鈴木俊貴さんの今後の研究にも期待したい、応援したい。