87 平野恵理子 亜紀書房
私はこの本が初読だが、実は前作があるらしい。五十八歳で山村暮らしを始めた筆者は、最初は自転車で生活していたが、雨や冬の寒さ、路面凍結などのきつさに、ついに免許を取得することを決意した。この本は、教習所通いと、免許取得後の生活が綴られている。
還暦少し前の免許取得。他人事ではない。私も、何度免許を取得しようと思ったことか。そのたびに家族に反対され、自身も自信を無くし、あるいは結局面倒になって、断念し続けてきた。ある時、友人に「こっちは免許返納を考え始めているこの歳に、何を今さら」と言われてなるほど、と思った。以来、完全に断念に至っている。
山村暮らしは、さすがに車が要るよなあとは思う。筆者も、ホームセンターや道の駅など、今まで自転車で行っていた「いつもの場所」なら行けるようになったという。でも、この方、私と同じで(と書いたら失礼かもしれないが)、新宿で友達とつい話し込んで、終電に駆け込み乗車したり、あるいは間に合わなかったり、はたまた家の中でひっくり返ってあばら骨を骨折したりと、結構なうっかり者である。交通量の多い都会の道路や高速道路は回避しておいた方が安全そうに思われるし、さすがにそうなさっているご様子である。
住居にスズメバチの巣を発見して駆除してもらったり、思いがけない小動物との出会いがあったり。山村暮らしならではのエピソードが…と書いていて思い出したが、私だって、スズメバチが我が家のベランダに巣を作りかけて、一人で撃退したことがある、道端でハクビシンと遭遇したこともある。それも、東京杉並区で。もはや、都会も山村も変わらんのう。
一人暮らしの田舎生活。そういえば、佐野洋子さんも、晩年の一時期を軽井沢で暮らしていらしたっけ。それも悪くないかもだけど、寂しがり屋の私にはきっと無理だなあ。免許持ってないしね。