医者の稼ぎ方

医者の稼ぎ方

2021年7月24日

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フリーランス女医は見た 医者の稼ぎ方」筒井冨美 光文社新書

 

筆者は「ドクターX 外科医大門未知子」シリーズの制作協力をした医師だそうだ。このドラマを私は見ていないが、米倉涼子が自信満々の顔で「私、失敗しないので」と言っているのには何度かお目にかかっている。おお、かっこいいわねえ、と思ってはいた。
 
この本は、医者がどうやってどれだけ稼いでいるか、のリアルな話を書いている。研修医制度の実態や、化石と化した爺医の弊害、「世界に冠たる」と誇っている有名私立大医学部のトホホな現実なども明らかにしている。
 
どうやら、時代はフリーランスの麻酔医らしい。勤務医より、博打を打つような開業医より、大学病院の教授より、フリーランスの麻酔医のほうが儲かるようだ。世にはびこる困った医師や、使えない医師の実態、それに研修医の使えなさなんかもバシバシ書かれている。副題に「稼ぎ方」ってあるものね。どうやったらどれくらい儲かるか、という身も蓋もない現実が書かれているけれど、結果として医療体制批判や、現実の他業種の働き方に対する提言にまでつながっているのは、さすがお利口さんが書いただけのことはあるという感じだ。
 
結婚して子どもを産み育てながら仕事をする女医に対する視線が厳しいのは、まあ、現実に役に立つかどうかという視点に立てば仕方ないのかもしれない。でも、もうちょっと長いスパンで物を見てほしいなあ、とは思う。途中でブランクがあっても復帰できて、やりがいがあり、それなりの収入が得られるという点では女医ってありがたい職業ではあるからね。
 
外科医はみんな心のなかに墓場を持っている、なんて「当然でしょ」的に書かれていると、やっぱりぎょっとする、医師あるあるなんだろうけれど、つらい。一人の人間にとって、病気になったときの医師は、それが全てであり、次はないからね。医療職に着くには、まずは人間性、命の大切さをしっかりと身にしみてわかっている人であってほしい、と心から思う。最近、医師との関わりが増しているこの頃だからこそ、そう思う

 

2017/8/18