180 藤井一至 PHP
「大地の五億年」の作者監修の、子ども向け調べ学習図鑑。大きくてしっかりした造りの本で、カラー写真がたくさん入っていて、とても分かりやすい。内容はおそらく小学校高学年向けなのだろうけれど、子ども向けに薄められることはなく、丁寧に詳しい解説があって、歯ごたえもかなりある。大人が時間をかけて読んでも、新しい知識と出会い、十分に楽しめる内容である。
私が小学生のころ「科学」と「学習」という学年別の学研の雑誌があった。「科学」は理系の、「学習」は文系の様々な情報が詰め込まれた雑誌で、教科書よりも楽しく興味深く掘り下げられていた、実に楽しかった。一学年上の姉の分も含めて、どれだけ毎月楽しみにしていたことか。本を読む楽しみも、物事を深く掘り下げて考えたり調べたり、論理を積み重ねるという思考方法も、私はこれらの雑誌から学んだと思う。
最近は、何でもネット検索でわかってしまうし、学年別の紙の雑誌なんて廃れて久しい。だが、今振り返っても、あの楽しみは何ものにも代えがたかった。この図鑑を読んで思い出したのは、まさしくあの「科学」と「学習」のわくわくであった。この世には、ものすごくたくさんの、まだ私の知らない真実が存在する。でもそういうことを深く掘り下げ、調べている人がいて、こんなふうに子どもにもわかりやすく教えてくれる。いつか自分が大人になったら、同じように、知りたいことをうんと調べてわかっていくこともできる。そういう未来への希望や知識欲や向学心といったものが、確かにあの雑誌にはあった。それに似たものがこの図鑑からは感じ取れた。
本当に好きなこと、知りたいことを熱心に調べて、そのことについて、どうしてもられかに語りたい、伝えたいという熱意は、確かに人に伝わる。お仕事だから、とか、本当なそれほど好きでもないけれど儲かりそうだからやっていることは、そこまでストレートに誰かに伝わることはない。好きだから、何があっても自分はこれをやりたいと思っているから、だから続けている、という情熱を、この図鑑から私は受け取る。あらゆる子どもが喜ぶ本ではないけれど、これを手に取った子どものうちの誰かはきっと、土って面白い、土についてもっと知りたい、調べたい、実際にシャベルをもって掘りに行きたい、と思うに違いない。
そういう本を書く人を、私は信頼するし、尊敬する。