67 新川帆立 幻冬舎
第38回「山本周五郎賞」受賞作。ミステリである。
「憤慨おばさん」と呼ばれる野党女性議員、高月と「お嬢」と呼ばれる与党の二世女性議員、朝沼。二人はライバル同士ではあるが、性同一障害特例法の改正のために協力し合っていた。が、法案は与党である国民党の総務会でつぶされた。国会内で、高月は朝沼に、最初からつぶす気だったかと詰め寄り、朝沼は自分も必死だったが党の重鎮が寝返ったと泣きながら言う。その晩、朝沼は死体で発見された。
政治の世界で女性がどのように位置づけられているのか、どのように取り扱われるのか。政治家たちはどのように仕事をするのか。政治家秘書は、新聞の政治部記者は、そして地方女性議員は。様々な女性たちが描かれる。最後にはとんでもないどんでん返しが待っている。
ミステリとして面白い。のかもしれない。と、変な書き方になってしまうが。この小説の中では、女性首相はまだ実現していない、と書かれていて、どうにも鼻白んでしまう。実際には女性首相は実現したが、そのおかげでこの国は大変な方向へ走り出しており、もはや無茶苦茶である、どうしようもないほどに。それを思うと気が重い。女性議員が権力を持ったって、そりゃ「それが誰なのか」によっては地獄なんだぜ、という当たり前のことをかみしめる。ああ、そのせいで、小説を読む気力もかなり削がれてしまう・・・・。
という個人的な感傷(!)もあるが、それと同時に、議員に対してすら行われるセクハラや、公平を装った役割分担のアンバランスや、世間の目といったものがあからさまに描かれ、それがまたリアリティありすぎで、そっちにも心が沈む。本当に、日本の政治の世界はまだまだ差別に無自覚なままだ。
どんでん返しの果てに、ある種の方向性や希望が示されるとしても。とにかくだね。女性議員が権力を持てばそれでいいということじゃないんだよね。と、またしても思ってしまう。なので、今、この本を読んでも素直に読み取れない私なのであった。作者様、ごめんなさい。
