93 やまじえびね KADOKAWA
サウジアラビアとモロッコとインドと日本とアフガニスタンの少女の物語。
サウジアラビアの少女は、同級生の姉が結婚する話を聞く。相手の男性とは結婚式で初めて会うのだという。結婚式のその場で、好みの顔じゃないと言われて結婚が中止になったエピソードも出てくる。私たちは結婚しなければ生きていけないのか、と彼女は思う。
モロッコの少女は、女の子というだけで文句を言われ続ける経験をする。だが、文句を言う老婆は文盲であった。文字を知らないことの苦しみを、彼女は想像する。
インドの少女は、お金持ちの言いなりにならねば生きていけない現実に出会う。日本の少女は、学があるために母は幸福になれないと祖母に言われる。でも、幸福って何だろう。
そして、アフガニスタンの少女は、タリバンから解放されて、やっと学校に行けることになる。鉛筆と本をもらうことがどんなにうれしいか。だが、その後、またタリバンがやってくる・・・。
15年近く前に読んだ「私は逃げない」という本を思い出す。イスラム法典において、女性は男性の半分の価値しか認められない。二人の男たちからレイプされ殺された少女の裁判において、男たちが処刑されると、少女の命の価値1ポイントに対し、二人の男達の命の価値4ポイントとの差額3ポイント分の金額から処刑の経費を差し引いた金額が、なんと被害者遺族に請求される。これを、ブラッドマネーという。なんということだろう。女性は、被害を受けてなお、それを訴えることでむしろさらに支払わねばならないのだ。
性別、民族、思想信条、階級、身分、文化・・・。あらゆる差別はいまだ存在し続けて、いつになったらなくなるのか、気が遠くなるようだ。そうした差別的意識をうまく利用して求心力としたり、自分たちの権力につなげようとする人たちが必ずいる。私たちのなかにも、差別意識は気が付かないうちにこびりついている。それを忘れないように、いつも気が付けるように。こういうマンガが持つ力は大きい。私たちは、人はみな平等で、同じように幸せになっていいのだということを、忘れてはいけない。
みんな、選挙には行ったかな。こんなときだからこそ、投票という正しい方法で、私たちは意思表示しよう、民主主義を体現しよう。よく考えて、皆が幸福になることを目指している人を、選ぼう。