宮田珠己の楽しい建築鑑賞

宮田珠己の楽しい建築鑑賞

133 宮田珠己 著・写真 傍島利浩

我が家の新刊即買い作家のひとり、宮田珠己氏の新作。「路上のセンス・オブ・ワンダーと遥かなるそこらへんの旅」以来である。本作も、建築物やそこから派生した様々な設置物に着目した本。特定の建築物、設置物をこよなく愛好する人たちにインタビューして思いのたけを語ってもらった本である。対象となるのは、秀和レジデンス、団地、室外機、吹き抜け、エスカレーター、灯台、送水管、公衆トイレなどなど。いろいろなものに、偏愛する人がいて、熱心に写真を撮ったり訪ね歩いているのが面白い。

私は高いところが苦手なので、吹き抜けもいっぺんに見渡せるようなエスカレーターも好きではない。好きではないが、愛好する人の気持ちは、これを読んだら何となくわかった。送水管や室外機がずらっと並んだ景観は、私も実は割に好きかも。そういえば、公衆トイレが好きな人は、インスタグラムに海外からもいろんな問い合わせがあり、スペインから本にしましょうという申し出もあったのに、やり取りするのが面倒なので、写真は使っていいから勝手にどうぞ、と言ったら本当に本が送られてきたという。ちゃんと契約すればそれなりにお金になったかもしれないのに、そういうことには何の熱量もないところがまた面白い。トイレの清掃に関わる素晴らしい映画「PERFECT DAYS」も観ていないというし、本当に自分の興味の中だけで完結するのだなあと感心してしまった。

ところで、この本は開くと二枚、何も書かれていない水色の紙があって、最後にも同じように二枚、水色の紙が付いている。これは何のための紙なのかなあ。何か青空のようで、めくるのに気分がいいとは感じたが。メモ用紙にでも使ってほしいのだろうか。教えて、宮田さん(笑)。