146 鶴岡コレクション 写真・西岡潔 大福書林
昨冬、東京ステーションギャラリーの「みちのく いとしい仏たち」展を見に行った。江戸時代の地方の村々の小さなお堂や祠などに祀られた素朴でユニークな仏像・神像の展示である。仏師や造仏僧ではない、木地師や大工の手になる、粗末で素朴な材料によって彫られた民間仏、神像が集められていた。芸術として心を打つというよりは、ほっとする、心が和む、どこか笑ってしまう、かわいくて、優しくて、でも何か悲しみも秘めたような像ばかりであった。
我が家の新刊即買い作家のひとり、宮田珠己氏がXで東京「古道具なおんど」で興味深い展示が行われているとつぶやいているのを見て、夫婦で出かけてみた。そこで出会ったのが、この本に収録されている民間信仰の神仏像たちである。みちのくの仏さまたちと同じような、あるいはそれよりもさらに素朴な像がそこにはいた。かまどに置かれて煤けてしまった竈神や、村落やあぜ道に置かれていて風雪に削られ、丸みを帯びた田ノ神像、すり減ってお顔も判然としない恵比須様、元は白木であったかもしれない黄ばんだ招き猫…。どれもが素朴で昔から人々の生活に根付いて共に歩んできた時を感じさせる暖かみのある像であった。
この本はそれらのお像を長らく収集し続けてきた鶴岡幸彦さんと写真家の西岡潔さんによる一冊である。時々手に取ってこれらのお像を眺めていると、心がほっこりして慰められる。そういう感覚を持つようになったということは、それだけ私も歳を取ったということか。良い本であった。
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