57 安田菜津紀 ポプラ社
人は、食べなければ生きていけない。おいしいものを食べるのは人生の喜びである。食べ慣れたものは、心を落ち着かせ、安心させてくれる。食は、生きることそのものでもある。
この本は、難民となって日本で生きる人々に故郷の料理を作ってもらい、ともに食卓を囲み、料理を味わいながら、その人がどのように日本に来て生きているのかを語ってもらった記録である。
シリアのコーヒーはカルダモンが香り、ミャンマーのラペットゥはお茶の葉がサラダになっている。ロヒンギャのモヒンガはナマズのだしが効いた麵料理で、ネパールのダルバートは豆といろいろなおかずの盛り合わせ。バングラディシュのビリヤニはスパイシーな炊き込みご飯で、カメルーンのオクラスープはトマトとニンニクの味、カンボジアのコーサイッチュルークは香辛料のきいた豚の角煮。どれもおいしそうだ。
政治的な理由で故郷を追われ、戻ると逮捕されたり拷問が待っているのに、日本で難民申請をしてもなかなか認められない。誰もが非常に苦労しながら、故郷から家族を呼び寄せ、何とか日々の生活を送れるに至った話をしてくれる。そんなに苦労しても、彼らは日本を嫌いにはならず、周囲の人と仲良く助け合いながら、社会に役立とうとしている。
各章の終わりには、「教えて!難民のこと」というコラムがあって、難民とは何か、どういった問題があるのかがわかりやすく解説されている。日本における難民認定率は2018年にわずか0.25%だったという。アメリカは35.4%、カナダは56.4%、韓国は難民認定率の低さが指摘されているが、それでも3.1%だという。日本はあまりにも難民認定率が低いと何度も国連から指摘を受けているという。「やさしい猫」でも入管の問題が取り上げられていたように、私たちはもっと難民について知り、考えなければいけないのだと思う。
この本は、子供や在日外国人が読めるように、漢字にはすべてルビがふってある。良かったら、この連休にでも、子供たちと一緒に読んでほしい。