121 名取佐和子 筑摩書房
「銀河の図書室」で知った作家。これも、図書がらみの本だった。今回は、小さな文庫をもつ旅館の話。その文庫から取り出された五冊の本がモチーフになって、それぞれが緩くつながりあってエンディングに集結する。真ん中にいるのは若女将。まだ二十代と思われる彼女は体質的に本が読めない。それで、宿の客に本を読んでもらい、その話を聴くのを楽しみにしている。
今回のモチーフは日本文学。川端康成、横光利一、志賀直哉、芥川龍之介、夏目漱石。読んだことのない本もあったが、この本を読み進めるのに支障はないし、ほんのりと内容が紹介されて、むしろ新たに読んでみたくなる。その辺りの仕向具合は絶妙だ。
本を読むということが、人にどんな影響を与えるのか、その人生をどう支えていくのか。そんなことをもう一度思い返させてくれるような一冊であった。
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