明日、あたらしい歌をうたう

明日、あたらしい歌をうたう

82 角田光代 水鈴社

「三面記事小説」以来の角田光代。角田さん、なんて良い小説を書くのだろう。胸が熱くなった。

最初の子がまだ赤ん坊のころ、私は家で毎日音楽をかけていた。いちばん聞いたのは清志郎だ。繰り返し繰り返し聞いていたら、言葉がおぼつかなかったはずの息子がいつの間にか「すーべてーはおーらい!」なんて歌うようになっていた。清志郎を聞くと元気が出た。家で孤独な育児をしていても、一人じゃないと思えた。

この小説に、似た様なことが書いてあった。親が子に何の興味もなくても、ひとりぼっちで友達がテレビだけでも、自分がまるで透明人間みたいだとしても、彼の音楽を聞くと世界が色づく。生きていてよかったと思える。そうだね、そうだよね。頷きながら、読んだ。

孤独な子どもだった母親。父も祖父母も親戚もいない、母しかいない子ども。それでも生きていた。いつの間にか世界は色づいた。助けてくれたのは、音楽だったし、手に入らないと思っていた友達だった。生きてるってこういうことだ。明日はもっといいことがある。

いい小説だなあ。暖かい物語だ。良い本を書いてくれて、角田さん、ありがとう。